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Invisible Limiter Nano レビュー by SUI

Invisible Limiter Nano は、キャンペーン期間中、Steinberg のオーディオインターフェース UR シリーズや Cubase 製品のラインナップを購入したユーザーに無償で配布されるプラグインのひとつです。フォーマットは 64ビット の VST 3 のみで、扱えるサンプルレートは 44.1 kHz から 192 kHz までの対応となります。

製品に冠する名の通り、日本国内から世界へ向けて開発、販売されている A.O.M. 社製プラグイン "Invisible Limiter" のリミッティングアルゴリズムを継承したマスタリングリミッターです。

SUI  - 作家/トラックメイカー/エンジニア

ヒップホップ、R&B、EDM のトラックメイク・制作手法に精通し、作曲からアレンジ、ミキシング、マスタリングまで幅広く手掛ける。EXILE ATSUSHI、EXILE SHOKICHI、三浦大知をはじめとするダンス系から、Nissy (西島隆弘)、ももいろクローバーZ、リリカルスクールなどのポップ系、アイドルまでアーティストへの楽曲提供は多岐に渡る。また DJ MURO、DJ HAZIME などヒップホップ系プロデューサーとの共同制作で手腕をふるう。近年テレビドラマやアニメ劇伴、CM 音楽へも進出。機材誌での連載執筆、各種セミナーやブログを通じて DAW、音楽制作に関する情報を幅広く提供している。

それでは製品を詳しく見ていきます。プラグインの中央に大きなノブが用意されています。これを右に回すことでプラグインに入力されたゲインを上げ、0 dB のピークを超えたものをリミッティングしていくスタイルです。後述しますが厳密には -0.1 dB(デジタルピーク)で止まるようになっていて、設定の変更はできません。ノブの周りには二重の円形メーターを配置。内側がゲインをアップした量(青色)、外側がリミッティングによるリダクション量が表示されます。このリダクションメーターは同時に AES17 準拠の RMS 値を色で表示し、青(-12 dB 以下)から赤(-4 dB)まで変化します。ここ1年くらいの市場で流通している一般的な音源は RMS 値で -12 dB から -6 dB 程度ですので、実質リダクションメーターが緑(-10 dB から -8 dB)もしくは黄色(-8 dB から -6 dB)になるところまでリダクションすれば十分でしょう。サウンドクラウドなどでは高いところで - 4 dB 程度のものも見受けられますが、-6 dB 以上の音源はデジタル音声ファイルという観点からもどこかの帯域が不快にひずんでいることがほとんどですので、意図的にひずませている場合を除けば音楽的には望ましくないと言えます。

親製品 Invisible Limiter から継承した便利機能として、画面左にソフトニーボタンとユニティゲインモニターボタンがあります。前者は入力したオーディオがリミッティングレベルを超える少し手前からリダクションを始めるもので、主にアタック感の強いダンスミュージックなどに強烈なコンプをかけたときのような不自然な潰れ感を緩和します。ユニティーゲインモニターをオンにすると、リダクションした分だけ自動でモニターする音量を下げてくれます。これは Bypass ボタンと併用することで、リミッティング前とリミッティング後の音を同じ音量で聞き比べることができます。リダクションによって楽曲全体の質感がどのくらい変わるかを確認しながら作業を進めることができるので大変便利です。

画面右上の Quality はオーバーサンプリングの倍率を決めるもので、1 から 5 まで選択できます。値が高くなるほど倍率が上がり、波形をより細かく読み取ってリミッティングするので、トゥルーピークと呼ばれる突発的な波形の飛び出し(デジタル表示上は -0.1 dB で止まっていてもアナログ波形としては 0 dB に到達し場合によってはそれを超えてノイズを発生する)を抑える効果があります。トゥルーピークはリミッティングの量によって増減しますが、かなり強めにリダクションした音源を計測したところ、Quality 1 では 0.3 dB ほどオーバーし、Quality 3 から 0.0 dB 以下になりました。またこのオーバーサンプリング技術はオーディオの高域処理にも効果があり、質感がよりなめらかになる傾向があります。綺麗に仕上げたいときは値を上げると効果的ですし、綺麗ばかりが正解ではないので、段階的に試して印象の良いものを選ぶとよいでしょう。参考までに私が試した音源(ビート感の強い歌もの)では 3 もしくは 4 が適当でした。

せっかくですから親製品 Invisible Limiter G2 (以下 G2)にも目を向けてみます。G2 はこれまで紹介した Nano の機能をより充実した内容で実装し、細かく設定を変えることが可能です。リミッティングにおいて質感を左右するキモとなるニー設定はカーブ、アタック、リリースを変更でき、前出のソフトニーは 0% ~ 100% まで調整可能です。同じく Quality も 10(プロジェクトのサンプルレートの 512 倍の精度でピーク検知)まで設定可能となっています。また耳に聞こえない超低域をカットしリミッティング時のひずみ感を抑える(結果的により高いレベルの音源を作れる) DC Cut ツマミ。高域に少しクセを加えてロールオフし低域の引き締め効果もある Bias スイッチも用意されています。加えて新バージョン 1.8.1 から Mode と呼ばれる圧縮アルゴリズムに新しく Modern Ⅱ が加わり、これまでの Modern、Surpress などの5択から選択できます。2ミックスファイルを作成する際に工程の最後の段(マスター直前)で必要となるディザーもアコースティック、エレクトロニックなどの曲調に合わせて選択することが可能となっています。ちなみに Nano で採用されているアルゴリズムは一番新しい Modern Ⅱ で、従来の Modern よりもクリアな傾向にあるようです。

さて両製品を少しいじめてみます。私の直近のラフミックスをミックスダウン、マスタリングの工程をいっさい省いたうえ、全体が少し歪むくらい強くリミッティングしてみました(平均 RMS 値で -3.8 dB くらい)。G2 は国外でも非常に評価が高いリミッターで著名エンジニアの使用実績などもうなずけるところです。強くリダクションしても違和感のある潰れ方をしにくく、また数値的な面で市場の音源程度のレベルまでひずむことなく音圧を上げることが可能です。Nano においては、G2 のライト版として音のクオリティも多少下がりそうなものですが、出来上がったファイルを並べて逆相再生したところ、キックのアタックのところで酷めにひずんでいる個所以外は無音となりました。つまり通常の使い方であれば両製品はほぼ同じものを作れると考えて差し支えなく、これが今回一番驚いた点です。また両ファイルを聞き比べた印象では Nano の方が設定項目が少ないがゆえに少し乱暴に扱えるというか "適度にいい感じ" にまとめてくれて、かつ結果が良い。G2 は逆に繊細な調整ができる、またそれが必要になるので多少の知識と手間がいるぶん対応できる音楽の傾向が増え、そのクオリティを保てるという印象でした。設定項目数と見た目は Nano 感あるものの、音質面では全く Nano ではない点に A.O.M. の気概を感じます。

A.O.M. プラグインエフェクト プレゼントキャンペーン

UR シリーズ / Cubase シリーズを購入されたお客様を対象に、A.O.M.株式会社のプラグインエフェクトを無償にてプレゼントいたします。

- 期間・数量限定 -

キャンペーンステッカーが貼付された下記製品パッケージをご購入のお客様が対象です。

  • UR 全シリーズ (UR12 / UR22mkII / UR242 / UR44 / UR28M / UR824)
  • Cubase 全シリーズ (Cubase Pro / Artist / Elements 通常版およびアカデミック版)
    バンドルパック含む

詳しくはこちらのページをご覧ください

A.O.M. について

A.O.M.株式会社は、東京を拠点に活動しているソフトウェア・デベロッパーです。同社のリミッター・マキシマイザー「Invisible Limiter」は世界で大ヒットを記録。他にも自然で透明なサウンドが特徴のイコライザー「tranQuilizr」や音声の定位や左右の広がりを調整するパンナー「Cyclic Panner」など、精度が高くユニークな機能を搭載したプラグインを開発・販売しています。