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Nils Frahm インタビュー - Steinberg Pro Sessions

クラシックとエレクトロニカを自由に行き来するその音楽性、即興的なライブパフォーマンスとサウンドエンジニアリングを両立するスタイルに世界が注目するアーティスト Nils Frahm。Cubase を愛用し続ける彼が Steinberg を訪れてくれました。その際のインタビューを掲載します。
* 2016年9月に Steinberg 英語サイトと YouTube に掲載したビデオインタビューの日本語訳です。

アカデミックな音楽と、踊れる音楽やジャズ、エレクトロニックなど、両方の世界に住む音楽をいつも求めている

僕は Nils Frahm。ベルリンに住むコンポーザーです。ハンブルク出身ですから Steinberg と共通点がありますね。Cubase を長年使って、ライブやスタジオでの制作、それにマスタリングエンジニアとしての仕事も多くやってきました。こうして Steinberg を訪れて、スタッフと意見交換の場が持てて、とても嬉しいです。

僕はとても音楽的な家庭で育ちました。父は独学で音楽を習得したミュージシャンでしたから、息子である僕には音楽のレッスンを受けるようにと勧めました。おかげで僕は父のとても自由な音楽アプローチと、先生から学ぶとてもクラシカルなアプローチの両方を学ぶことができました。
僕はいつも、アカデミックな音楽の面と、踊れる音楽やポップやジャズ、フリージャズ、エレクトロニックなどを結びつけようとトライしています。両方の世界に住む音楽を、いつも求めているんです。

これまで、自分のスタジオで多くのピアノ作品を録音してきました。さまざまな録音テクニックを用いた、サウンドデザイン作品ともいえるでしょうね。そこではエレクトリックサウンドをアコースティックのように、またアコースティックサウンドをエレクトロニックのように響かせる可能性を追求してきました。

Cubase は音を「よく聴こえるように」飾るのではなく、正直に聴かせてくれる

17歳のときにコンピューターを使った音楽制作と出会ってから、サウンドを生み出す可能性が一気に広がりました。そして僕は、音楽にはミュージシャンも大切だけれど、楽器や機材、スタジオもとても大切だとわかりました。Cubase は僕にとっての楽器のようなものです。プレイすればするほどわかってきます。ピアノやシンセサイザー、ギターや他の楽器のように、練習することだってできるんです。

僕はあまりにも沢山のピアノを持ってるので、リハーサル室や家などいくつもの場所にピアノを設置しています。それぞれ違う音色なのですが、どれもインスピレーションの源です。僕の作曲法というのはいつもだいたい、ピアノにマイキングして機材をセットしたら、録音していることを忘れてひたすら演奏し、そうして録音した即興演奏を後から編集する、というものです。たとえばシーケンス上で切り張りしたり、というふうに。

僕は世代的に、いつでも HiFi オーディオで音楽を聴ける環境で育ったせいか、グレイトなサウンドを聴くことがなによりのインスピレーションになっています。なので僕にとっての作曲は、何かを聴いてアイデアを得ることから始まります。アイデアを具現化するための、効率のいいやり方がないか? といつも考えているんです。そんなわけで僕の Cubase の使い方というのは恐らく独特なのですが、音楽的アイデアを具現化するのにとても役立っています。要素を切ったりレイヤーしたりクロスフェードする… といった作業が Cubase ではとても簡単に行えるので、これのない世界なんて考えられません。

僕は Cubase を隅々まで知り尽くしてるわけではありませんが、楽しむためには十分(Cubase を)知っていると思います。Cubase はとても直感的で、強力です。ライブパフォーマンスで毎日使っている MIDI 機能は、機材の同期からインストゥルメント、エフェクト、ルーティングなどをすべて効率的に扱えますし、一方でオーディオ機能も完璧で、波形の隅々まで拡大して編集ができ、とても頼りになります。

またマスタリングにも Cubase を使用しています。とても透き通った純粋な音をしていますし、Cubase は音を「よく聴こえるように」飾るのではなく正直に聴かせてくれるので、100%信頼が置けるのです。Cubase でミックスダウンをするときは、二度聴き返す必要もなく、すぐに音を決められます。僕にとっては…もちろん、誰でも自分の使うソフトウェアに対してはそう言うのでしょうが、僕の経験から言えることは、他の(ソフトウェアに)目移りする必要などない、ということですね。

Cubase は僕のユニークなやり方を通せるような余地を残して、自由にさせてくれる

僕にとっての良いソフトウェアというのは、さまざまな角度からアプローチができて、その中から自分自身のワークフローを設定し、(創造という)山を登るために自分自身の道程を見つけることができるソフトウェアです。ソフトウェアのデベロッパーが想定したやり方に縛られたりしない、という感覚が大切です。市場にはさまざまなソフトウェアがあり、とてもクリエイティブで、素早く直感的に扱えるものも多いと思いますが、僕は個人的に Cubase のある意味謙虚さというか、押し付けがましくない部分が好きです。Cubase はただ、ユーザー自身のアイデアを実現させるためだけに、(創造の世界に)招いてくれるんですね。

Cubase には、僕が個人的に DAW に求めていないようなクリエイティブな機能も沢山搭載されています。でも(Cubase は)それを強制するのではなく、自分のユニークなやり方を通せるような余地を残して、僕の自由にさせてくれます。開発した方々がたぶん考えもしなかったようなやり方で扱える、ここが好きです。そして、今こうして実際にスタッフと会って、「彼らはこのソフトをこんな風に使うなんて考えもしていなかったんだ、でもそのことで世界が広がっていくんだ」と確信しています。きっと誰でも、そんなことができるんだなと思います。

こうして(Steinberg の)スタッフと会えるということはとても光栄です。長く Cubase を使ってきましたが、まさか僕のごく個人的なアイデアをこうして伝えることができたり、今後のアップデートにそんな希望が反映されるかもしれない、なんて思いもしませんでしたからね。とても感慨深いです。

何かを伝え、フィードバックを得て、もちろんサポートを得ることもできる…仲間の一部になれたような感覚です。今後のアップデートですごい機能が追加されるかもしれない、だけど一方で自分の好きなように扱うこともできるんだ、と思えることは、素晴らしいだと身に染みて思います。だってそれは、とても重要なことですからね。