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2019年3月に発売したフラッグシップオーディオインターフェース AXR4T のデモソング「Something New」。この楽曲は新宿御苑にある Studio Greenbird で、AXR4T と Cubase で 32ビット整数フォーマットにて録音されました。今回、レコーディングを務めていただいたエンジニアの中村フミト氏に、セッションの状況や AXR4T を使用した感想について伺いました。

- AXR4T のデモソングの制作では、レコーディング、ミックス、マスタリングまですべてのエンジニアリングを担当していただきましたが、まずはそのレコーディングの参加メンバーについて聞かせてください。

はい、今回ご一緒していただいたアーティストは THE CHARM PARK with Friends の皆さんです。

THE CHARM PARK さんは昨年の12月にエイベックスからメジャー 1st アルバムをリリースしたシンガーソングライターで、最近は CM などでも頻繁に楽曲が使用されているのでご存知の方もいらっしゃると思います。

AXR4T Demo Song "Something New"

  • Vocal, Acoustic Guitar, Lyrics, Compose / THE CHARM PARK
  • Piano / 小林創 Hajime Kobayashi
  • Trumpet / 類家心平 Shinpei Ruike
  • Tenor Sax, Horn Arrangement / 武嶋聡 Satoru Takeshima
  • Double Bass, Co-Compose / 近藤零 Ray Kondo
  • Drums, Percussion / 神谷洵平 Jumpei Kamiya

そして今回バンドとして参加されたピアノの小林さん、トランペットの類家さん、サックスの武嶋さん、ベースのレイさん、ドラムの神谷さんは、私も他の録音現場でも何度もお世話になっているのですが、大橋トリオさんやさまざまなアーティストのサポート、個々の活動など、ジャズからポップスまで現在の日本の音楽シーンの第一線で活躍されている方たちです。

チャームさんのアルバムは生楽器主体のアコースティックなものから電子音を織り交ぜたサウンドまで、非常に幅広いのですが、今回は AXR のマイクプリの音質の良さと、32ビット整数オーディオのメリットを確認する意味で、生楽器のみのストレートなアレンジにしていただいてます。

- なるほどレコーディングには、THE CHARM PARK さんをはじめ気鋭のミュージシャンの方々が参加されたのですね! では、この楽曲がいかにしてレコーディングされたのか、その詳細について解説をお願いします。

録音に使用したスタジオは新宿御苑にある老舗スタジオ、Studio Greenbird です。 このスタジオは都内でも有数の素晴らしい部屋の鳴りとモニター環境を備えていて、4リズムの一発録りにも対応できるので選ばせてもらいました。

- 当日のレコーディングの流れとしては、どんなフローだったのでしょうか?

レコーディングの流れとしては最初にドラム、ウッドベース、ピアノ、アコースティックギターの4リズムを同時に録音して、その後にホーンとコンガ、ボーカルをオーバーダビングしました。

- 今回の楽曲では、生楽器が主体ということで、マイクセッティングなども重要になってきますよね?

録音に使用したマイクはジャズ寄りの定番とされるマイクを中心にセレクトにしていて、マイキングに関してもオーソドックスな位置です。オーソドックスなマイクセレクトにした理由は、AXR4 のマイクプリが商用録音に耐えうるものかをテストしたかったからなのですが、まったく問題なく、クリーンでスムースなサウンドをキャプチャーすることができました。

- これらのマイクからの信号がすべて AXR4T に直接インプットされ、AXR4 の内蔵マイクプリによってレコーディングされたわけですね?

そうですね、マイクプリはすべて AXR4 の内蔵マイクプリで、3台スタックした AXR にマイクを直接接続して録音しました。そしてモニター用の出力のみスタジオの Neve コンソールに立ち上げてモニターしました。

- レコーディング当日のコントロールルームやスタジオの様子なども、ご紹介いただけますか?

スタジオの常設 DAW である Pro Tools では 32ビット整数の録音が行えないので、Cubase Pro を持ち込んでいます。当日はスタジオのアシスタントさんに加えて、Cubase のオペレーターとして私のアシスタントも乗り込みで一緒に作業しました。
Neve コンソールの袖に3台の AXR を積んで、マイクが直接接続されています。AXR は Cubase のダイレクトモニタリングに対応しているので、レイテンシーもなく普段と同じように録音ができました。

今回、4リズムの同時録音ではすべての楽器をブースに分けて録音しています。

ドラムはオンマイクと全体をキャプチャできるポジションに Kit (Top) マイクをステレオで立てています。
ウッドベースはライン無しのマイク1本のみです。
ピアノはマイク2本でステレオ収録、今回のレコーディングでは屋根と鍵盤蓋は外しています。
ギターはモノラル収録ですね。

あとからダビングしたホーンは Tp、Sax にオンマイクとステレオでルームマイクを立てています。
ボーカルに関しては今回の曲調とチャームさんの声質に合うと思い、Neumann U67 をチョイスしました。

いずれの楽器も収録方法としてはかなりスタンダードなセッティングだと思います。

- なんといっても、Cubase Pro による 32ビット整数録音も、今回のデモ制作のおける大きなポイントですよね?

そうですね、私自身も 32ビット整数での録音は初めてだったので緊張もあったのですが、非常に興味深いレコーディングになりました。音作りに関してはマイキングと AXR4 のノーマル状態のマイクプリでほぼまかなっています。

あとは必要に応じて AXR 内蔵の DSP エフェクトの Sweet Spot Morphing Channel Strip でローカットなどの微調整を行いました。

ボーカル編集は、チャームさん本人が行っています。ワンテイクでひとつづきに録音したボーカル素材を編集してあっという間に3声ダブルのバッキングボーカルを作っていました。通常はアーティストが編集したい箇所をエンジニアに伝えて私やアシスタントが実際の操作を行うのですが、チャームさんは Cubase のヘビーユーザーで、Cubase の操作は私やアシスタントより全然速かったです。今回、私自身 Cubase で本格的に録音したのは初めてだったのですが、こういう形でアーティストが DAW のオペレートに直接関われるようになると、よりスピーディーにクリエイティブなレコーディングが行えると感じました。

エンジニアは Pro Tools ユーザーがほとんどですが、クリエイターは Cubase ユーザーが圧倒的に多いので、これは今後、商用スタジオにも Cubase を導入するメリットになると思います。このセッションを経験してから、私が拠点にしている Endhits Studio にも早速 Cubase を導入しました。

- 今回 32ビットで録音してどのような印象を持ちましたか?

32ビット整数の音質的な評価については、まだ自分の中で整理がついていない部分もありますが、はじめて 24ビットや DSD を聴いた時と同じ感動がありました。
音の感じ方には個人差があると思うのですが、個人的には32ビット整数サウンドは低音の量感と空間の奥行きの表現力に違いを感じました。32ビット整数で書き出したミックス音源は歌や各楽器の奥行きの位置関係がより感じ取れるように聴こえます。また、レコーディングしている最中のプレイバックでも明らかな違いを感じました。慣れているスタジオのモニター環境だったので違いが分かりやすかったのだと思いますが、「あれ? なんかいつもよりハイファイで高級感がある音がするな」と思いながら作業していました(笑)。これは32ビット整数の影響というより、ローエンドがしっかり見えつつもその上の帯域を邪魔せずにダンゴにならない、という高品位な AD/DA としての AXR4 のサウンドの傾向だと思います。

現状では32ビット整数フォーマットに対応した機器が少ないことから、使いどころはアナログをなるべく高品位にデジタル変換したい場面、私であればミックスのマスターレコーダー用の AD/DA コンバーターとして使いたいですね。DSD でも同じことをしていましたが、マスタリングスタジオに AXR4 を持っていって、32ビット整数フォーマットでプレイバックして作業してもらう、というのはかなり有効だと思います。

- 今回レコーディング時には使用していないとのことですが、Rupert Neve Designs の SILK エミュレーションも AXR の大きな特長の1つとなっています。こちらの印象もお願いいたします。

SILK 機能は本家の Rupert Neve Designs のお墨付きだけあって、「本物の」サウンドだと思います。2つのモード (RED / BLUE) もサウンドのキャラクターがハッキリしていて使いやすく、SILK を ON にするだけでサウンドの存在感が増します。

個人的には特に OLD NEVE サウンドを彷彿とさせる BLUE モードが好きです。サウンドの変化も嫌味がないので、2MIX にかけても良い結果が得られると思います。AXR4 は SILK = OFF、SILK = RED、SILK = BLUE と3つのキャラクターを持つマイクプリを備えていることになりますね。

先ほどの32ビット整数対応や、このクオリティの AD/DA コンバーターとマイクプリ、そして SILK 機能を併せ持っていることを考えると AXR4 は非常にコストパフォーマンスの高い製品だと思います。個人的には32ビット整数フォーマットの音質をユーザーがどう評価するか非常に興味深いですが、純粋な AD/DA コンバーターとしても AXR4 は非常に優秀かつ現代的なサウンドを持つ製品だと思います。

中村フミト - プロフィール

フリーダム・スタジオでキャリアをスタートし、2008年からはフリーランスとして活動しているレコーディング・ミキシングエンジニア。
近年はビッケブランカ、安藤裕子、UEBO、Contrary Parade などの作品に携わる。Endhits Studio の立ち上げにスタジオ顧問として参画し、Mastered for iTunes 認証を受けたマスタリング・エンジニアとしても活躍中。

Endhits Studio WEB Site
Endhits Creators - 中村フミト

AXR4T

32ビット整数、384 kHz サンプリングレートでの録音再生という新次元の音質に到達した、Steinberg のフラッグシップオーディオインターフェース。
RND SILK エミュレーションによる音楽的なサチュレーションと、限りなくクリーンな音色を選択できる、ハイブリッドマイクプリアンプを4基搭載。

AXR4T 製品ページ