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メジャーアーティストへの楽曲提供やゲーム、劇伴、CM、そしてギタリストとしても数多くの作品を手掛けている ZENTA(ゼンタ)さん。「銘機」と呼ばれるギターアンプをずらりと揃え、さらに最近ではミキサーも新調したという自宅スタジオにお邪魔して、Cubase との出会い、作品作りでの Cubase の使い方やコツなどを教えていただきました。

- ZENTA さんが音楽やギターを始めたきっかけを教えてください。

ZENTA:小学6年生のときに、友達のお兄さんがエレキギターを弾いているのを見て「かっこいいな~」と思って自分もやりたくなって。さっそく楽器屋さんに行って、初心者用セットみたいなのを買いました。でも、そのときには全然弾けなくて、すぐに弾かなくなってしまいました。

- それからまた弾くようになったきっかけはなんだったのでしょう。

ZENTA:中学2年生のときに、学校で「3年生を送る会」があって、そこで演奏しようということになったんです。発表会を目標に一からメンバーを集めて、仲間たちと練習して、身近な目標があったから頑張れたのだと思います。その頃は、とにかく好きなアーティストやギタリストの曲の「弾けるところだけ弾く」、という感じで夢中でコピーしていました。ただ、バンドスコア見ても楽譜やタブ譜がよくわからなかったので、耳で聞いて「こうかな?」みたいにやってましたね。

- プロを目指そう、というような気持ちになったのはいつ頃ですか。

ZENTA:中学3年生の頃に近くの楽器屋さんに、それこそ毎日のように入り浸っていて、店員さんが、音楽のこと、バンドのこと、ギタリストのこととかを教えてくれたんです。それから曲を作るために必要なものを教えてくれて、バックトラックはヤマハの QY70 で、そしてカセットとかデジタルの MTR で曲らしきものを作るようになっていました。それで、店員さんに「こういうコンテストがあるから応募してみたら」と勧められて応募したら、なんと「審査員特別賞」というのをいただいたんです。

- 中学3年生で、というのはすごいですね!

ZENTA:賞品でギターアンプをいただいて、「俺って天才かも」なんて思っちゃいました(笑)。それでちょうどその頃、進路を決める時期でもあったんですが、自分はあまり勉強が好きじゃなかったので、音楽の道に進みたい、と両親に相談して、高校へは行かず音楽の専門学校に入ることにしたんです。そこで音楽やギターの専門的な知識を学びました。

- Cubase はどういうきっかけで使うようになったのでしょうか。

音楽制作の雑誌を読んでいて、12年くらい前かな、「これからはパソコンで音楽を作る時代だ」というような記事を読みまして。これなら自分の理想の音が作れる、と思って、ただ最初は別の DAW ソフトを使っていたんです。で、8年くらい前にあるときゲーム音楽のクライアントさんから「2ミックスではなく、各トラックをバラバラに出力して送って欲しい」と言われたんですよ。そのとき使っていた DAW ソフトではそれをやるのがけっこう面倒で、友達に相談したら「それなら Cubase なら一発だよ」って言われまして。使ってみたら「なるほど、これは便利だ」ということで使い始めて、それ以来 Cubase 一筋です。

- Cubase での制作過程を教えてください。

ZENTA:歌ものだとまずメロディを作って、歌う人のキー合わせをしてからバックトラックを作っていきます。インスト系だったらギターのリフとかコード進行を作りますね。リフができたら、すぐに Cubase に録音してそれがそのまま本チャンとして使われることも多いです。

- 本物のアンプを使ったマイク録り、しかもたくさんのヘッドとキャビを完全防音で録れるからすぐに本チャンが録れるんですね。よくあるアンプシミュレーターソフトの本物版みたいですね(笑)

ZENTA:とにかくきちんと本物のアンプの音を録りたくて、このスタジオを作ったんです。昔はアパートの6畳部屋の半分のスペースに DIY で防音ルームみたいなものを作って、夏は汗びっしょりになりながら録っていました。それからアコギをマイクで録ってたら「竹や~竿竹~」みたいな音が入ってきて参ったりとか(笑)。なので、このスタジオで録るようになってからは、ギターはほぼ100%マイク録りで、ライン録りはしないです。

- バックトラックはどう作っていますか。

ZENTA:ベースも自分で弾いて録っています。ドラムは、生ドラム系の場合、デモ段階では MIDI で打ち込んで、最終的には自分のスタジオにドラマーを呼んで Cubase でドラムレコーディングしたり、打ち込みっぽい曲は、サンプルを貼って作っていますね。シンセ系はハードとソフトを含めてまだ研究中ですが、いろいろな音源を使いながら MIDI で作っていき、ストリングスの入力は、Cubase の「エクスプレッションマップ」を活用して、奏法を切り替えて生っぽくなるようにしています。同じ音源のまま、ある部分ではピチカートにしたり、スタッカートにしたりレガートにしたりということが手軽にできるので重宝しています。Cubase ユーザーの音楽仲間にも「これ便利だよ」って教えてあげてます。

- Cubase のどんなところが気に入ってますか。

ZENTA:オーディオと MIDI がシームレスなところですね。さあ作ろう、というときにあまり意識せずに、どんどん作っていけるんです。というのも、僕はテンプレートを活用しているからなおさらなんです。自分では「うなぎのタレの継ぎ足し」って呼んでますけど(笑)。

- うなぎ? タレ? どういうことでしょう?

ZENTA:たとえば、ギターのインスト曲で無事クライアントから OK が出たとしますよね。その曲はもちろん保存しておきますが、それとは別に、その曲のオーディオデータや MIDI データを全部消した状態でテンプレートとして保存するんです。すると、そのテンプレートにあるのは、「うまくいった曲のエフェクトやインストゥルメントの状態」だけになるんです。また次に同じような依頼が来たらそのテンプレートを開いて作り始めれば、まったくの0の状態から始めるよりも、「すでにうまくいった土台」がそこにあるわけですから、余計なことを考えずに曲作りに没頭できるんです。で、そのテンプレートを使って新しく作ったときにもいろいろと調整しますから、またそれを上書きしていくと。

- なるほど、テンプレートをうなぎのタレのように「継ぎ足し」ていくんですね。

ZENTA:僕のテンプレートファイルは、これまで作ってきた歌もの、ギター系、ストリングス系とかいろいろなジャンルのテンプレートがあるんです。そういうふうに使っていくと、効率良く曲作りができますよ。

- 他にも使いこなすコツがあったら教えてください。

ZENTA:この間発見したんですが、曲の構成をいろいろと考えているうちに、すべてのトラックをフォルダートラックに入れた状態で、切ったり貼ったりというようなことをやってみてすごく便利だな、と思いました。イントロから始まるバージョンとかサビ始まりのバージョンとか、バリエーションを作るときにすべてのトラックが1つのフォルダートラックになっているとすごく簡単に作業できるので、これもお勧めですね。

- 他の DAW ソフトに比べて Cubase はどんなところが良いと思いますか。

ZENTA:Cubase はなんと言っても「ユーザーが多い」というのが安心ですよね。ガイド本も多いですし、Youtube で使い方を教えてくれる投稿もかなりありますし。僕の音楽仲間にもかなりの割合で Cubase ユーザーがいるので、困ったら友達に聞けるし、逆に聞かれたら教えてあげていますよ。僕みたいにマニュアルをほとんど見ないのに、ちゃんと仕事として使えるわかりやすさもありますね。そう言えば若い頃、駆け出しの作家仲間7~8人と話していたら、全員 Cubase ユーザーで(笑)。しかも今ではその仲間たちはみんな作家として大活躍してますね。

- プロを目指して、Cubase で音楽制作をしている人にアドバイスをお願いします。

ZENTA:やはり「自分を信じる」ということでしょうか。僕もメジャーで作家デビューしましたが、その後がなかなか続かなかったんですよ。で、あるとき、テレビのコマーシャルで流れていたギターのリフがかっこよかったので、それをコピーして、演奏動画を Youtube に投稿したんですが、概要欄にオリジナルのギターインスト曲の URL も貼っていたんです。それをたまたま見た某社のディレクターさんが動画と一緒にオリジナル曲も聴いてくれたみたいで、そこから仕事の依頼メールがきて、それが今につながっています。僕が仕事にならないと思って趣味で作っていたハードロックの曲だったんですけど、え! 僕がイイと思った音楽をイイ! って言ってくれる人がいる! という事が嬉しくて。だから、どんなところにチャンスがあるかは誰にもわからない。

自分を、自分の音楽を信じて作り続けた先に何か人生が変わる出来事があるかもしれない。僕もまだまだ叶えたい目標があるので、諦めず、お互い頑張りましょう!