Steinberg Media Technologies GmbH

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東京・青山に居を構える MA スタジオ「beBlue」(ビーブルー)。同スタジオは、劇場用『DOLBY ATMOS』のサウンドデザイン・プリミックスから、『DOLBY ATMOS HOME』の音声マスター制作にまで完全対応する日本初のスタジオです。

本インタビューでは、beBlue AOYAMA にて DOLBY ATMOS 対応コンテンツの制作作業を行っているサウンドデザイナー / レコーディングミキサーの染谷和孝氏を直撃。同スタジオのプランニングをはじめ、数々のスタジオ構築も手がける染谷氏に、DOLBY ATMOS にも対応するオールインワン DAW システム Nuendo および Nuage によるサラウンド制作について、その魅力やメリットなどついて、実際のサウンド試聴を交えながら語っていただきました。

- このたびは制作作業真っ只中のお忙しいところ、インタビューにご協力いただきありがとうございます。まずは、今回制作されている DOLBY ATMOS 対応コンテンツについて教えていただけますか?

現在は、ヤマハミュージックジャパンからご依頼をいただきました、いくつかのデモンストレーション用コンテンツの MA 作業を行っているところです。1分半程度の映像に、DOLBY ATMOS を効果的に用いたサウンドのオーサリングを施しています。おそらくは、今後なにかの機会に皆様にも広くお聴きいただくことになると思いますのでぜひお楽しみに!

- 今回の DOLBY ATMOS 対応コンテンツの制作は、具体的にどのようなシステムで行われているのでしょうか?

今回の制作システムについては、基本的には弊社スタジオに導入されている Steinberg の DAW システム「Nuendo 7.1」、および「Nuage V1.8」をコアとして使用しており、レコーディングやミキシングなどすべての制作作業を、両製品を用いて行っています。ちなみに、モニタリングについて、Nuendo からヤマハ RMio64-D を使い MADI で出力したベッドチャンネルとオブジェクトチャンネルの信号を、DOLBY ATMOS HOME 用の RMU (Rendering and Mastering Unit) に入力しており、その出力がモニターコントローラーとしてのヤマハ DME64N を経由する仕組みとなっています。

- 最新の Nuendo 7.1 では、Dolby Atmos 制作環境に対応した3Dサラウンドパンナープラグイン「VST MultiPanner」が追加されましたが?

そうですね。バーション7.1からは、遂に 3D サラウンドパンナープラグイン VST MultiPanner が無償提供されるようになり、徐々にですが確実に Nuendo をベースとしたオールインワンなサラウンド制作環境が整いつつあると強く感じています。これで、最適化されたモニタリング環境と Dolby RMU (Dolby Rendering and Mastering Unit) さえあれば、オブジェクトベースの Dolby Atmos ミックスも、 Nuendo のみで可能になりますからね。
(* なお、Nuendo 7.1 において Dolby RMU を使用したミックスを行う際には、Nuendo RMU Connector for Dolby Atmos software が必要になります。)

- では、VST MultiPanner についての、実際の使用感や印象などはいかがでしょう? 従来のサラウンド制作環境などと比較し、どのようなアドバンテージをお感じになりますか?

新しい 3D サラウンドパンナープラグイン VST MultiPanner では、5.1 ch や 7.1ch といった水平サラウンドはもちろん、さらに高さの概念を加えた3次元空間でのパンニング操作が、非常に視覚的かつ直感的に行えるのが大きな魅力! さらに同プラグインでは、Dolby Atmos フォーマットにおけるプリミックス制作が行えるベッドモードと、Dolby RMU を使用して制作を行うオブジェクトモードの切り替えが用意されており、クリック1つでいつでもモードの切替えが行えます。切り替えた際にトラックのオートメーションや他のパラメータは保持されるので、とても効率的に作業を進めることができます。

また、VST MultiPanner の画面には、「2D」と「3D」の2つのビューが同時に表示されているので、音像の立体的な位置や動きの様子を一目瞭然に把握することが可能です。今回の制作では、マウスのみでパンニングなどのパラメーターを書き込んでいるのですが、その際にもこのディスプレイが非常に重宝しています。さらに、パンニングの軌跡をプリセットパターンとして読み込み可能なので、立体的な音源移動を容易に素早く作成でき便利です。

- 続いて、DAW システムをミキシングエンジンとする Nuage をコンソールとして採用するメリットについても、具体的にお教えいただけますでしょうか?

Nuage を DAW コントローラーおよびミキシングコンソールとして使用することの最大のメリットは、やはり Nuendo との優れたインテグレーションということに尽きると思います。また、当スタジオの出力モニター補正のために導入している3台のヤマハ DME64N(MY8-LAKE 搭載)とのリレーションおよびオペレーション性能の高さも、大きなアドバンテージといえるでしょう。また、最新ソフトウェアとなる Nuage V1.8 では、前述の 3D サラウンドパンナープラグイン VST MultiPanner が、Nuage Master のタッチスクリーン画面上にも忠実に再現され、タッチ操作による 3D サラウンドパンのコントロールも可能となっています。一方、Nuage は、DAWとして Nuendo を使用する場合のみならず、Nuendo をミキシングエンジンとしつつ、純粋なコントローラーとして他の DAW をスマートにリモートすることもできるなど、快適な操作性に加え、他に類を見ない柔軟性と接続性を兼ね備えたスタジオシステムであることも見逃せないポイントです。

- 今回の制作に限らず、普段からのサラウンド音源の制作にて、よくご使用になる Nuendo の機能やプラグインなどがればお教えいただけますか?

今回のコンテンツ制作にも、空間のアンビエントを表現する際などに、大いに活用しているのが、サラウンドに対応したコンボリューションリバーブプラグイン「REVerence」です。1つのプロジェクト内でも最低4~5個程度は利用してますね。複数のリバーブを同時に使用する際にポイントとなる余韻のコントロールを行うためのパラメーターの調整はとても取り扱いしやすく、サウンドクオリティーも申し分ありません。そのほかにも、IOSONO 社のサラウンド・ミキシング・プラグイン「Anymix Pro」が標準搭載されているのも見逃せません。Nuendo なら、サラウンド制作に欠かせないエフェクトやパンナーもあらかじめ付属しているのですから、我々エンジニアとっても本当に有り難いことですね。

- 最後に、Nuendo および Nuage を使用したコンテンツの制作を通じてのご感想、ご意見などございましたら、ぜひ一言お願いいたします。

今回、実際の制作において Nuendo + Nuage のコンビネーションを使用し、その先進性、機能性、操作性、安定性、拡張性、柔軟性などあらゆる面で、サラウンド制作に最適なオールインワン DAW システムとして着実な進化を遂げていることを、改めて実感させられました。もちろん、まだまだ細かい要望を言い出せば切りがない部分もありますが、ヤマハと Steinberg の両社は、ユーザーからのフィードバックを積極的に取り入れ、システムの改善と機能向上に前向きに取り組んでいる姿勢が強く感じられるので、信頼を寄せています。また、オールインワンな DAW システムであることは、スタジオの制作環境をよりシンプルにし、コストパフォーマンスの面においても、プロフェッショナルにとって大きなメリットをもたらすでしょう。これからの Nuendo と Nuage のますますの発展、そして我々の想像を越えるような大いなる進化に、期待しています。