Steinberg Media Technologies GmbH

Creativity First

Beim Strohhause 31
20097 Hamburg

Tel: +49 (0)40 210 35-0
Fax: +49 (0)40 210 35-300

「近谷直之」氏は、Google、Softbank、NTT Docomo、SONY、キューピー、トヨタなど数々の企業の CM 曲を手掛け、「かしこい狗は吠えずに笑う」、「めんたいぴりり」といった映画やドラマの劇伴、多数のアーティストやゲームコンテンツへの楽曲提供、さらにはワーナーミュージック・ジャパンからリリースしている自身の音楽プロジェクト「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語」でもアーティスト活動する今大注目のサウンドプロデューサーです。本インタビューでは、2018年にオープンしたばかりの近谷さんの制作スタジオにお邪魔し、同氏と音楽とのなれそめから、プロフェッショナルとなるまでの紆余曲折、音楽制作環境の要ともなっている Steinberg Cubase のメリットやアドバンテージなど、深く幅広く語っていただきました。

大学時代のバイト先のスタジオで Cubase と出会う

- 近谷さんが音楽や作曲にご興味をお持ちになった理由について教えてください。

3歳ころからピアノを習いはじめました。ピアノの練習はあまり好きではなかったのですが、それからはあくまで遊びの延長として毎日ピアノは弾いていた感じです。5歳になる頃には、難解なクラシック曲は自己流でアレンジするなどして誤魔化して弾いたりしていましたね(笑)。おそらく、それが自分にとっての作曲や編曲のルーツといえるかもしれません。ちなみに、小学生の頃は、ソングブックなどを見ながら演奏して、それをラジカセに録音してみるなどもよくやっていました。本格的に作曲を意識したのは、中学時代にバンドを組んでギターを始めてからです。同時に学校のオーケストラ部でビオラの演奏も始めて、気が付けばその頃からずっと現在に至るまで音楽漬けの日々です。僕にとっては、クラシックもロックもポップスも民族音楽も、すべて大好きな音楽として古今東西ジャンルを問わずとくにかく幅広く音楽を聴いていました。その経験は、今でも自分にとってとても大きな財産になっていると思います。

- 音楽のプロフェッショナルを意識したきっかけとは何だったのでしょうか?

大学生になってから、今ではあたりまえかもしれませんが、パソコンと DTM を活用すれば一人で何十人もの演奏を簡単に再現できると知り衝撃を受けました。「コレなら仕事になるのでは?」と直感的に感じたのがきっかけですね。また、大学在学中に、作曲家「菅野祐悟」さんのスタジオでアシスタントをすることになり、そこでスタッフの皆さんが実際にお仕事しているのを目の当たりにし、プロの音楽家としてのお仕事にリアリティーが持てたというもの大きかったと思います。実は、そこで初めて Cubase に運命の出会いを果たすことになり、以来ずっと愛用させていただいています。菅野さんや、同時期に在籍していた作曲家「得田真裕」さんには、素人同然だった僕に音楽や Cubase について一から教えていただき、本当に感謝しています。

CM 音楽制作会社では Cubase で年間200曲以上を制作!

- では、スタジオで Cubase と出会い、そのままプロフェッショナルとして活動を開始したのですか?

いいえ、就職を考える際に、音楽で食べていきたいと決心して、いろいろ活動してみたのですが、残念ながら希望するようなオファーをすぐにはいただけませんでした。でも、今にして思えばその活動方法がちょっと大胆すぎたのかもしれません。デモ曲を聴いていただくためにデモテープを送った会社は、心に決めた業界No.1の1社のみ。あとは、ひたすら返事をいただけるのを待つという。今思えば無謀な行動でしたが、待つこと半年あまりで、奇跡的に希望する CM 音楽制作会社からお誘いをいただくことができたんです。ニート状態の半年間は、悶々としながらも毎日 Cubase に向かって、ひたすら楽曲を作る日々を過ごしていました。あの日々を共に戦い抜いた Cubase とは、もはや戦友といえる仲ですよ(笑)。人にはあまりお勧めはできないですが…、自分の音楽の価値を信じて突き進む行動も音楽業界の狭き門をこじ開けるには必要なこともあるかもしれませんね。

- 希望されていた CM 音楽制作会社でのお仕事は、どのようなものだったのでしょうか?

待望であった CM 音楽制作会社に入社してからは、候補曲も含め年間200〜300曲は楽曲を制作しました。同時進行で10件以上の案件をてがけ、ジャンルも、ロック、ポップ、エレクトロ、ジャズ、ビックバンド、オーケストラなど千差万別。また、自分に足りない要素は貪欲に学び吸収しながら、これまで自分の中で培ってきたすべての知識やテクニックを総動員して必死に作業していたのも良い思い出です。狂おしいほど音楽が大好きで、作曲が楽しくて仕方ない自分だからこそ、続けることができたのだと思います。若干ペースは落ちたものの、現在でも CM 楽曲だけでも年間100曲以上は楽曲を作っていますからね。社会人として貴重な経験を積ませていただいた後、CM 音楽をはじめ、映画やドラマなどの劇伴音楽、アーティスト、ゲームコンテンツへの楽曲提供など活動の幅を広げるため、3年程前に独立しました。

これまで Cubase のデータが飛んだことは1度もありません

- 長年の Cubase ユーザーである近谷さんが感じる、その魅力やメリットとはなんでしょうか?また、お気に入りの機能などはありますか?

個人的に、作曲の初期段階では、MIDI トラックを多用するので、ロジカルエディターをはじめとした Cubase の MIDI 入力、編集機能の優秀さ、豊富さには助けられています。また、これまで大量の楽曲を作成してきましたが、PC や Cubase のフリーズなどでデータが飛んだことは一度たりともなく、その安定性もプロフェッショナルなツールとしての大きなメリットといえるでしょう。お気に入りの機能としては、やはり「非録音時の MIDI 入力データを記録」ですね。楽曲のアイディアなどを練る際にも、一瞬湧いてきたフレーズの断片などを確実捉えられるので、とても重宝しています。さらに、MIDI だけでなくオーディオの取扱についても、VariAudio 機能を活用すれば、他のツールを使用せず Cubase のみで、オーディオのピッチやタイミングも自由自在に調整することが可能で非常に便利です。ちなみに、頻繁に使う波形のリバースは、「Z」キー1つで行えるように設定しています(笑)。なお、スタジオには、多数のプラグインだけでなく、ビンテージのマイクや機材なども数多く所有しているのですが、デジタルがアナログの劣化版というわけでは決してなく、各々がそれでしか出せない音、できない表現があり、それをシーンによって臨機応変に使い別けています。Cubase は、バージョンアップのたびに、この機能が欲しかったというポイントが着実に追加・増強されていくので、毎回アップデートが楽しみです。

- 最後に、音楽業界を目指す Cubase ユーザーの皆さんにメッセージやアドバイスをお願いいたします。

ここ数年で、サウンドクリエイターも制作環境、そして社会(市場)との関わり方も大きく変化してきていると思います。Cubase をはじめ、もはやプロとアマチュアの制作環境に違いはほぼありません。また、プロモーション方法1つとっても、SNS や動画共有サイトなど、これまで考えられなかったほど手軽に世界中の人々に自分の楽曲を聴いてもらえる機会が増えており、その可能性は無限大です。それらの手段を積極的かつ上手に活用することで、自分が望む音楽関係の仕事がより身近に、現実のものとなることでしょう。まずは、客観的に自分の楽曲や立場を分析してみるのもお薦めです。僕自身にもいえることですが、常に多彩なインプットを続けながら、それを自分で消化しオリジナルとしてアウトプットしていく作業を続けることが大切です。あとは、気合いと根性さえあれば何とかなりますよ(笑)。これからも作曲を生きがいとし、人々に影響を与えられるような楽曲を作り続けていきたいですね。

近谷直之 - プロフィール

1988年4月30日 岐阜県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。幼少からピアノをはじめ、学生時よりバンド活動でギターやオーケストラ部でビオラパートを担当。

卒業後 CM 音楽制作会社 MR.MUSIC にて年間200本ペースで CM 音楽を担当。2013年、「三井のリハウス/みんなの声鉛筆」が ACC テレビ CM 部門「ACC ゴールド」受賞。2016年、自身の音楽の幅を広げるために独立。

2017年、音楽で物語を綴る新しいスタイルの音楽コンテンツ「SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語」でワーナーミュージック・ジャパンよりメジャーデビューを果たす。

以降、CM、映画、ドラマ、ゲーム、コンサートオーケストラアレンジ、メジャーアーティストへの楽曲提供を多数手がける。

『SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語』

“音で紡ぐファンタジー作品” と題した、音楽とストーリーが融合する新しい形のエンターテイメントファンタジー作品。物語は毎週 Web で更新され、ストーリーと音楽を豪華声優陣が盛り上げる。

原作・作詞・作曲を矢内景子、サウンドプロデュースを近谷直之、シナリオ・脚本を『ファイナルファンタジー』シリーズ等を手掛ける野島一成が担当。声優陣には、主人公リエン役を花江夏樹、その妹トレスタ役を日岡なつみ、謎の少女シェルシュ役を福島亜美、アイソル役を梅原裕一郎、 ブライ役を浪川大輔、狂気の男ネブラエス役を鈴木達央、エマ役にはニコニコ動画「歌ってみた」カテゴリ再生数NO.1動画を持つ人気歌い手・ろんが参加。そして主人公であるリエン、トレスタの母ベネッタ役を俳優の夏木マリが務める。

2017年に2度実施された、配信限定ライブコンサート「SHADOW OF LAFFANDOR STORY LIVE~ある少女の光と影の追憶~」では、どちらも視聴数約10万回を記録し、fresh!の視聴数ランキング第1位を獲得。また、同年7月~9月に TOKYO MX 及び、SUN TV にて放送されたテレビアニメも、初週放送日には Twitter のトレンドワード入りを果たした。あのドラゴンクエストシリーズの生みの親堀井雄二氏も絶賛しており、音楽でロールプレイングゲームを感じることのできる新感覚アーティストとして話題を集めている。

現在は第2期に向けて絶賛制作中なので是非 公式ページYouTube 上の楽曲をチェックしてほしい。