WaveLab Pro/Elements 9 徹底活用ガイド
著・監修:藤本 健
第02章 波形編集の基礎知識
WaveLab のもっとも基本的な機能がオーディオ波形を編集する機能です。ここでは、そのオーディオを録音したり、ファイルから読み込んで波形表示させるとともに、それを波形編集する基本的な操作、手順を紹介していきましょう。
02-01 オーディオを録音したい
まずは WaveLab のもっとも基本的な使い方ということで、録音の手順を紹介します。基本的にオーディオインターフェースが接続、設定されていることが前提となりますが、ここにオーディオ機器や楽器を接続した上で録音をした結果が、WaveLab 上に波形として表示されます。
手順1: 新規ファイルを作成する
手順2: 録音ダイアログが開く
手順3: 録音の準備をする
録音ダイアログの設定が正しいことを確認するとともに、入力レベルの調整を行います。この際、手順1で設定したチャンネル、サンプリングレート、ビット解像度と、ここでのオーディオファイル形式が合致していることを確認してください。異なっている場合は、ここで設定します。
*「作成ファイル」の項目が「新規オーディオファイルウィンドウを作成」とした場合は、新しいオーディオウィンドウに録音され、「アクティブなオーディオファイルに追加」となっている場合は、アクティブな(=現在表示されている)オーディオファイルに追加で録音されます。
手順4: 録音する
手順5: 波形表示を確認するとともに再生する
02-02 オーディオファイルを開きたい
WaveLab は WAV や MP3、AppleLossless(ALAC)や FLAC など、さまざまな形式のオーディオファイルを開き、編集することが可能になっています。ここでは、そのファイルを開くための手順を2通りの方法で紹介してみましょう。
手順1a: 起動ダイアログから開く
手順2a: 目的のオーディオファイルを選択する
手順1b: 新規ファイルを作成する
手順2b: 目的のオーディオファイルを選択する
02-03 CD からオーディオをリッピングしたい
WaveLab ではさまざまなオーディオファイルを編集できますが、すでにファイル化されているものだけでなく、CD から直接オーディオデータをリッピング=抜き出して編集することも可能です。ここでは、その手順を紹介してみましょう。
手順1: ファイルの読み込み画面を開く
手順2: オーディオ CD を選択する
手順3: オーディオ CD をセットし、目的のトラックを選択する
CD ドライブにオーディオ CD をセットします。トラックの一覧が表示されるので、この中から目的のトラックを選択して「保存」をクリックします。
* トラックを選択して「再生」をクリックすることで、トラックの中身を確認することができます。
* Ctrl キー(Mac では command キー)を押しながらトラックを選択することで、複数トラックを指定することも可能です。
手順4: 読み込み実行
手順3で選択した CD トラックの読み込みが始まり、読み込みが終了すると波形が表示されると同時に再生がスタートします。問題がなければ、「オーディオ CD の読み込み」ダイアログを閉じれば完了です。複数のトラックを読み込んだ場合、トラックごとに別々の波形として読み込まれ、タブで切り替えが可能となります。
【コラム】曲名情報を取り込む
「オーディオ CD の読み込み」ダイアログにおいて「オプション」タブを開くと、さまざまな項目が表示されます。この中から「インターネットでトラック名を自動検索」にチェックを入れておくと、以降、CD を CD ドライブにセットすると、インターネットの CD データベースにアクセスしにいくようになり、自動的に曲名が表示されるようになります。
* ネットワーク・セキュリティの環境によっては、CD データベース (CDDB) へのアクセスができず、タイトル・再生時間などが正常に表示されない場合があります。
02-04 オーディオファイルを保存したい
WaveLab は読み込んだオーディオデータ、編集を終えたオーディオデータをさまざまなオーディオファイル形式で保存することが可能です。単に読み込んで保存するのであれば、オーディオファイルのフォーマットコンバーターとして使うこともできるわけです。ここでは、ファイル形式を指定して保存する方法を紹介します。
手順1: 名前を付けて保存する
手順2: 名前を付ける
手順3: 形式を設定する
手順5: その他項目を設定する
02-05 不要な部分をカットしたい
波形編集の第一歩は不要な部分をカットして、必要な部分だけにトリミングすることでしょう。とくにレコーディングした場合は、前後に空白となる不要部分が発生するので、これをカットすることが必須です。ここでは、そうしたカット操作について紹介してみましょう。
手順1: 不要部分を選択する
手順2: 選択した範囲を削除する
【コラム】ゼロクロッシングって何?
範囲を選択して削除などの作業を行う場合、削除した前後で音のレベルが突然変わると、ブチッというクリップノイズが発生してしまいます。そこで、「ゼロクロッシング」にチェックしておくと、選択した範囲の位置から一番近いところで、音量がゼロとなる部分=ゼロクロッシング・ポイントを自動で見つけ出し、そこを選択するようになります。これにより、前後がキレイにつながり、ノイズが発生しなくなるのです。ただし、波形表示の拡大を最大限にしたような場合は、ゼロクロッシングは無効になる仕組みになっています。もし、拡大表示しても、ゼロクロッシングを有効にするには、「ファイル」メニューの「ユーザー設定」−「オーディオファイル」を選び、「選択範囲をゼロクロッシングにスナップ」における「高倍率表示の場合はスナップしない」のチェックを外しておきます。
【コラム】必要な部分のみをトリミングする
02-06 フェードイン、フェードアウト処理をしたい
波形編集の基本の一つがフェードインとフェードアウトの処理です。フェードインとは、音の立ち上がりをゆっくりするためのもの、反対にフェードアウトは、音がだんだん小さくなっていくようにするためのものです。
手順1: フェードインする範囲を指定する
手順3: フェードインカーブを選択する
【コラム】短時間でのフェードイン、フェードアウトの意義
フェードインやフェードアウトというと、何秒も、場合によっては10秒以上もかけてゆっくりと音が大きくなっていったり、音が消えていったり、というものを想像することが多いと思います。そのような処理を WaveLab で行うことも可能ですが、実は数 msec、数十 msec といったごく短い時間でフェードインやフェードアウトをかけることも多くあります。適当な位置でカット処理を行った場合など前後で急にレベル差が生じると、プチッといったノイズを発生するケースが多いからです。その際に、ごく短い時間でフェードインまたはフェードアウト処理を行い、前後を滑らかに接続することで、意図しないノイズを避けることができます。もっとも「ゼロクロッシング」にチェックをしておけば、急なレベル差が発生することはないはずですが、やはりフェードイン、フェードアウトをかけることで、より安全に音を作ることが可能になります。
02-07 ゲイン調整で音量を変えたい
波形編集でできるもっとも基本的な操作の一つがゲイン調整を使って均一に音量を調整するという方法です。範囲指定をした上で、その範囲の音量を上げたり、下げたりします。
手順1: ゲイン調整する範囲を指定する
手順3: ゲインを選択する
手順4: 「適用」ボタンをクリックして、実行する
【コラム】ゲインと dB
ゲインの設定は dB(デシベル)という値で行いますが、dB に慣れていないと、どのような値を設定していいかなかなか感覚が掴めないかもしれません。0dB は音量を増減せず、+の設定で大きく、-の設定で小さくなります。また +6dB で2倍、+12dB で4倍の音量となり、-6dB で半分、-12dB で1/4になるということを頭に入れておくと分かりやすくなると思います。
02-08 ノーマライズ処理をかける
オーディオの音量は、ファイルによってさまざまです。これを均一化することをノーマライズと呼んでいます。一般的には最大音量をクリップしないギリギリである 0dB に揃えることをいいますが、WaveLab ではさまざまな設定でのノーマライズも可能です。
手順1: ノーマライズする範囲を指定する
手順3: 「レベル」ボタンをクリックする
手順4: 「適用」ボタンをクリックして、実行する
【コラム】ラウドネスノーマライザー、パンノーマライザーとは
一般的に波形編集におけるノーマライズとは波形のピーク値を0dBまたは指定した dB 値に揃えることを指し、WaveLab におけるレベルノーマライザーがそれに相当します。しかし、WaveLab では、レベルノーマライザーのほかにラウンドネスノーマライザー、パンノーマライザーというノーマライズ機能も用意されています。
ラウドネスノーマライザーは「ラウドネス」ボタンを、パンノーマライザーは「パン」ボタンをクリックすることで機能し、レベルノーマライザーを使った場合とは違った結果になってきます。
まずラウドネスノーマライザーとは、ラウドネス、つまり聴感上のレベルが目的とする基準値に合うように全体のレベルを均一化するためのものです。このラウドネスノーマライズでは「ターゲットラウドネス」の項目で、値を設定する形になります。この際、値を大きくすると、ピーク値が 0dB を超えてしまうため、そこに対しリミッターが効く形となっています。
一方のパンノーマライザーはステレオファイルにおける左右両チャンネルのレベルまたはラウドネスを統一するための機能です。「パン」ボタンをクリックするとダイアログが現れますが、ここでノーマライズするための処理の基準を「ピークレベル」にするか「ラウドネス」にするかを設定します。ここで「適用」をクリックすれば、どちらか小さいほうに揃う形になります。また「チャンネル間の差異を研修」をクリックすると、どのくらいの差があるか dB 値で表示されます。