AI Update インタビュー: MR816 CSX/X、CC121、Cubase 同時アップデート と Steinberg – Yamaha 共同開発の背景
2008年に登場した Steinberg のハードウェア MR816 CSX/X と CC121 は、Cubase ミュージックプロダクションシステムとの高度な連携機能 Advanced Integration により音楽制作/オーディオ業界に一石を投じました。今回同時にリリースした MR816、CC121、Cubase シリーズのアップデートは、これらシステム全体の価値を再び、飛躍的に向上させます。
アップデートには Steinberg と Yamaha のエンジニアリングチーム同士の努力と、ドイツのハンブルク、日本の浜松という大陸を越えた緻密な連携が必要でした。双方のキーパーソンに、ユーザーからのフィードバックの重要性、開発の技術的な背景そして新機能の概要をインタビューしました。
Stefan Schreiber - Steinberg ハードウェアマーケティングマネージャー
関戸裕一 - ヤマハ PA プロデュースグループ
steinberg.net: ハードウェアのバージョン1.5アップデートではどんな改良を施したのですか?
関戸: V1.5 ではソフトウェアコンポーネントのほぼすべてを更新しました。MR816 と CC121 を Cubase に統合するエクステンション、MR と CC 両方のファームウェア、その上 MR Editor ソフトウェアと MR のドライバーと、ほぼ全般に渡るアップデートです。一方ハンブルクの Cubase チームは Cubase 側での新機能を追加してくれ、それが Cubase V5.1 アップデートとなりました。
CC121 について伺います。CC121 の V1.5 アップデートの目玉は何ですか?
関戸: 多くの変更を施しています。EQ ノブを使って Cubase のクイックコントロールにアクセスし、実質上 Cubase のどのトラックのどんなパラメーターもコントロールできるようにしました。また、選択したトラックの FX センド1~8のレベルもノブで調節でき、ノブの下の (EQ の on/off) ボタンでセンドの on/off も行えます。
他にも CC121 からフォルダートラックの開閉を可能にし、プロジェクトのナビゲーションが楽になっています。ファームウェアアップデートにより EQ ノブの解像度も増し、Cubase 5.1 との組み合わせでは AI ノブで VST 2.x プラグインのコントロール (*注) も可能です。
Stefan: EQ セクションの改良は、ユーザーリクエストに応えた典型的な例です。12個の EQ ノブを他のパラメーターのコントロールにも使いたいという要望がとても多かったのですが、私達もこれは CC121 のオリジナルコンセプトである「Cubase の機能のハードウェア化」を発展させる、とてもいいアイデアだと思いました。その中でもベストと判断したのが、EQ ノブを Cubase のクイックコントロールにアサインする、という方法です。ユーザー自身でアサインできる選択肢も多く、しかも Cubase ユーザーが親しんでいるクイックコントロール機能だけに、プログラム操作も簡単だからです。
またこれもユーザーの要望でしたが、EQ ノブの解像度向上により、EQ セッティングをより的確に、スムーズに行えます。FX センドレベルのコントロールに関しては私達が持っていたアイデアで、皆さんもきっとこの新機能を喜んでくれることと思います。
では MR816 の V1.5 アップデートをみていきましょう。どこが変わりましたか?
関戸: MR816 のV1.5 アップデートは前回の V1.2に比べても飛躍的な改良です。V1.2 ではユーザーの要望に応えてヘッドフォンのレベルをマスターレベルから独立させました。V1.5 では、セッティングダイアログ全体が Cubase に含まれ、MR816 のほぼすべての設定が Cubase の “Audio Hardware” メニューから行えます。
また、Cubase から MR816 のマスターボリュームをコントロールできる機能を加え、Control (Command) + クリックで 0dB にセットできるオプションも追加しました。リバーブや音量の単位も sec、dB に変更し、この他勿論、いくつか見つかった不具合も修正しています。MR Editor もアップデートし、より多くのパラメーターを Scene として記録できるようになりました。
アップデートはどうやって入手できますか、インストールは簡単でしょうか?
Stefan: アップデータはすべて、Support > Download セクションの MR816、CC121 ページから無償でダウンロードでき、必要なソフトウェアツールはひとつのインストーラーをクリックするだけでインストールされます。また、ファームウェアアップデータはコンピューターとハードウェアの接続により、新しいファームウェアを MR/CC にアップロードします。私自身 CC121 のファームウェアをアップデートした時に、CC にターボチャージャーが搭載されたなと感じましたよ。
お二人共、ユーザーからの要望に対する回答がこのアップデートということですね。どうやって彼らの声を集めましたか?
Stefan: 私達はいくつもの箇所を通じて、ユーザーの要望をモニターしてきました。ひとつは forum.cubase.net です。この中の MR と CC のフォーラムでユーザーの経験に基づいた意見を募り、その後集まったデータを元に、最優先すべき問題と要望を割り出しました。
勿論、雑誌のレビューも重要です。彼らは機材を見る目に長け、とりわけ気に入らない点はすぐに指摘するからです。幸いにも MR の音質などは記者達にも好評だと判っていましたが、一つか二つ、改善を指摘された点もありましたので、これらの点も改善に盛り込みました。
加えて、私達は MR816 CSX/X を使用しているバンドやプロデューサーからの意見も貰っています。Marillion, Marcus Cliffe (Emmylou Harris, Paul Young, Tasmin Archer, FYC, Emma Bunton, The Manfreds), Ian Curnow (Kylie Minogue, Rick Astley, East 17), Michel Fakesch (ex- Funkstörung), Kraftwerk の Fritz Hilpert …それに彼ら以外にも沢山のプロフェッショナルが貴重なフィードバックをくれています。
あなた方は世界各地の楽器トレードショーに行くこともありますよね。そういった場で訪問客と話す機会もあるのでしょうか?
Stefan: 勿論。関戸さんも私も、ミュージックメッセのようなショーに行く機会があればいつもノートパソコンを広げてご意見を待っていますよ!
Steinberg や Yamaha にとって、ユーザーからのフィードバックが重要なのは何故でしょう?
Stefan: 私達は、機器を使う人にとって正しい機能を組み込んでいきたい。私達のハードウェアを毎日使っているユーザーこそが、どんな機能がワークフローを向上させるかを判断できる一番の立場にあると思います。MR や CC において、我々の目標は Advanced Integration テクノロジーを用いてレコーディングやプロデュースのワークフローを改善することです。だから、実際に現場で毎日使用してくれているユーザーの声を反映させるのが一番ですね。結局のところ、このようなユニークな機能を開発するにあたっては、「技術的に可能だから」だけでなく、「長い目で見てユーザーの役に立つから」機能を搭載するという姿勢が大切だと思います。
関戸: Steinberg と Yamaha はユーザーのニーズに常に柔軟に応え、製品を良くし続けて行こうと思っています。それが私達のポリシーです。
今後、Steinberg と Yamaha は MR、CC に対してどんな展望を持っていますか?
Stefan: Steinberg と Yamaha は、それぞれが特定の分野の開拓者、変革者として長い間業界を引っ張ってきました。2社共に革新と経験で知られており、私達が共同開発を行っているということは即ち長い目で製品をサポートするという事だと思ってください。この V1.5 アップデートは長期間のサポート、より良いソリューションの提示というテーマのほんの一例です。ユーザーの皆さんからの声には本当に感謝していますよ!
今日はどうもありがとうございました!
それぞれのアップデータは下記ページからダウンロードできます。
Cubase version 5.1
Cubase Studio version 5.1
MR816 CSX/X version 1.5
CC121 version 1.5
*注: マウスホイールでのコントロールに対応したパラメーターに限ります。