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アニソン制作からアイドル楽曲プロデュースまで – YUMIKO が語る Cubase

『ひぐらしのなく頃に』『ヘタリア』『うみねこのなく頃に』『神のみぞ知るセカイ』『GON -ゴン-』『ちゅーぶら!!』…… といった数多くのアニソンの作曲・作詞をすると同時に、最近では男性アイドルグループ BOYS AND MEN の楽曲プロデュースも手掛けるなど幅広い活動をしている YUMIKO さん。これまでは“裏方”に徹していましたが、7月16日にメジャーデビューしました。その YUMIKO さんの作曲、プロデュース作業を支えているのが Cubase。 Cubase VST 5の時代から15年くらい使い続けているという YUMIKO さんに、話を伺ってみました。

Cubase VST 5 以来 Cubase を使い続けている

- YUMIKO さんが、この世界に入ったキッカケはどんなことだったのですか?

子供のころからピアノは習っていて、高校・大学とクラシックを学んできました。自分でも好きで曲を作っていたのですが、 CM クリエイターの出田慎吾さんと出会ったのをキッカケに歌のコンペに参加したところ、採用されて、某テレビショッピングのテーマソングや番号案内の歌をうたったのが最初の仕事でした。大学2年生のときですね。さらに出田さんのところにいた、原田アツシさん(現ドリーム・モンスター代表)と知り合い、オレンジナビゲーターというユニットを組んで、そこから音楽活動を開始していきました。

- YUMIKO さんのこれまでの活動を見ると、アニメ関連が非常に多いですが、アニメ関係をはじめたのはどういう経緯だったのですか?

大学卒業後、即、フリーの作曲家というわけにはいかなかったので、一度OLとして働いていました。着メロを制作する会社で選曲や制作に携わっていたんです。その頃は自分で曲を書いて、ライブ活動をしていたのですが、今でもお世話になっているフロンティアワークスのプロデューサー岩田さんから「『ひぐらしのなく頃に』のキャラソンを作っているんだけど、参加しないか?」と声をかけてもらったのがきっかけ。確か2007年ごろだったと思いますが、そこからアニメの世界に入っていきました。アニメの音楽制作に関わることについて、とてもワクワクしたのを覚えています。

- 当時はすでに Cubase を使っていた?

はい、Cubase を使いだしたのは大学のころです。一番初めはミュージ郎を買って、そこにバンドルされていた Cakewalk を使って DTM を覚えました。その後、今も仕事を一緒にしている 作編曲家の原田アツシさんに Cubase を勧めてもらって、使いやすそうだな……と思い、購入したんですよ。確か Cubase VST 5 だったと思いますが、それ以来、ずっと Cubase ですね。Cubase SX の時代、Cubase 5、Cubase 6.5、そして Cubase 7と、途中、アップデートしなかったバージョンもいくつかありますが、結構買ってますよ(笑)。

- Cubase、実際どんな使い方をしているのですか?

MIDI での打ち込みやオーディオでのレコーディングなど、いろいろな使い方をしていますが、2011年ごろから担当している名古屋のアイドルグループ BOYS AND MEN の楽曲プロデュースにおいては、 Cubase がとにかく大活躍していますよ。最初は自分で作詞も作曲もしていたのですが、すごい量なので、今は作詞とプロデュースに専念しています。そのプロデュースの仕事において、ボーカルの録りや編集などすべて Cubase でやってますよ。

Cubase x UR28M が実現する、ミニマムなセットでのレコーディング

- 楽曲プロデュースの工程って、なかなかイメージがしづらいのですが、簡単に流れを教えてもらえますか?

最近、制作期間が非常に短くなってきていて、1曲2週間で完パケすることも少なくないんですよ(笑)。まずは、コンペを出すところからスタートし、曲が決まったらアレンジの発注をします。もともと私はアレンジはしないので、MIKE(野村真生)さんをはじめとするアレンジャーさんにお願いしているのですが、早いと3日程度で上がってきますね。その間に歌詞を仕上げておくのですが、上がってきたアレンジデータを Cubase のトラックへ流し込みます。そして別トラックに仮歌をレコーディングするんです。ウチでもレコーディングできるよう、簡易的なスタジオにしてあるのですよ。

- YUMIKO さんが仮歌を?

男の子のアイドルグループなので、ちゃんと男性ボーカリストに歌ってもらってます。協力してくれているボーカリストさんが近所に住んでいるので、朝でも夜中でも「すみません~!」って来てもらって、すぐレコーディング(笑)。これももちろん Cubase を使ってレコーディングしていて、それを持って名古屋に行くんです。

- 名古屋にはそのレコーディングデータを渡しておくのですか?

レコーディング機材一式持って新幹線で行くんですよ。普段、 Windows のノート PC で Cubase を使っているのですが、持ち歩きしやすいオーディオインターフェイスということで、以前 UR28M を購入したので、これをセットにしてリュックに入れて持っていきます。本当にミニマムなセットですが、軽くて便利ですよ!以前は 01V96 を使っていたのですが、これだと大きくて持ち歩くのはなかなか大変。それに比べるとずいぶんコンパクトになりましたよね。

レコーディング時間短縮に欠かせない機能 VariAudio

-で、その Cubase で本番レコーディングをしてしまうんですね!?

そうです。ただ、一番怖いのがキー。事前にメンバーみんなの声の高さはチェックしているので大丈夫なはずなんですが、こればかりは当日にならないと分からない面もあるんです。だから、まずはキーチェック。その後、キーが確定したら、すぐにアレンジャーさんに連絡をしてギターの譜面を書いてもらい、その間にレコーディングを進めていきます。譜面が上がってきたら、即ギタリストに連絡して、「これ、お願いします!」ってね(笑)。すべて同時並行で進めていくんですよ。

- レコーディングは、スタジオをキープして行っていくんですか?

最初はそうしていましたが、メンバーはみんな、1日何本ものレギュラー番組を持っていたりするので、レコーディングスタジオに移動して……というのがなかなか困難なんです。だから、今は、マネージメントする事務所の部屋にスタジオをセッティングをして1人ずつ録っていっています。ここで大きな威力を発揮してくれるのが VariAudio です。

- VariAudio をかなり活用しているんですね?

いま、VariAudio がなかったら、仕事ができません!といっても過言ではないです(笑)。時間がない中でのレコーディングだからこそ、録ったその場から、VariAudio を使って調整していくんです。本当は1人1日くらいかけて録音したいところですけれど、やはりスケジュールの問題がありますからね……。とはいえ、一方的に録音するのではなく、本人にも聴かせながら、どう見せたいか、聴かせたいかをすり合わせていくのです。1人1人の想いがちゃんと、ファンの人に届くように、気持ちが入るように。「もうちょっとカッコよくしたい」というのであれば、「じゃあ、もっと表情つけてやってみようか? といった具合にキャッチボールをしながら進めているんですよ。そうした意味でも、すぐに調整して確認できる VariAudio の威力は大きいですね。また、メンバーが13人もいるので、Cubase の管理で重要なのが、レコーディングトラックに、メンバーの一人ひとりの名前を付けること。そうすると録音されたデータ一つ一つに名前が入っていくので「Recording389……え?誰の歌?」みたいなことにならない。単純なことではあるけど、こうやっておくと、後で間違えないですからね。

- こうした作業は、すべて YUMIKO さんのノート PC と UR28M というシステムだけで行っていくんですね。


そのとおりです。非常にコンパクトながら、すべての機能が備わっていますから便利ですよ。レコーディング時、モニターバック用にリバーブを掛けたりはしますが、掛け録りではなく、録音しているのは生の歌声のみ。また、コーラスパートなどは東京に戻ってきてからスタジオで作業していきます。

- その後のミックスやマスタリングはどうしているんですか?

その先の作業はスタジオにお願いしています。もちろん最終の調整は立ち合いますが、データ自体はいったん私の手から離れることになります。エンジニアさんは通常 Pro Tools で作業するので、 Cubase の全ボーカルトラックを WAV で書き出して渡していますね。アレンジの発注からこのマスタリング完了までが約2週間。それを3本程度並行して走らせるので、なかなかタイトです。

メジャーデビュー曲は HALion Sonic SE で打ち込み

- ところで、YUMIKOさん、先日、メジャーデビューされましたよね?『カードファイト!! ヴァンガード レギオンメイト編』のエンディングテーマ『 Get back yourself 』でのデビューということですが、アニソンの世界で活躍してきたみなさんが“デビュー”というのもちょっと妙な気もしますが、裏方から表舞台に立つと、やはり違いはあるものですか?

これまでは、プロデュースであれば、彼らをどう見せていこうか、アニメの楽曲であれば、どうやってその世界観を表現していこうかと、もがいていましたが、自分でやるとなると、自由度が高くなるんですよね。「これをやったらダメ」という縛りもなく、逆に縛りがなさすぎて苦しかったというのが正直なところですかね(笑)。だから、いろいろと悩んでしまって、初め全然書けなくて…。4曲くらい書いて納得いかなくて、結局締切ギリギリになって追い込まれ、MIKE さんから「今日もらわないと間に合わないよ!」と言われてから、「Aメロまでできました!」、「サビできました!」……って細切れに作って渡して、なんとか間に合わせたんですよね(汗)あはは。

- 今回の作品でもCubaseを使っていたんですか?

そうですね。作曲の工程で Cubase を使っているほか、コーラスのレコーディングにも Cubase を使っています。メインボーカル録りは、スタジオで行ったので Pro Tools だったのですが、そのプロジェクトが 24bit/48kHz となっていたので、うちでも Cubase を 24bit/48kHz に設定した上でコーラスを録った後、エンジニアさんに WAV で渡しています。今回の作品は、自分が何をやりたいか見直すいい機会になりました。

- 今後の活躍、期待しています。ありがとうございました。