Steinberg Media Technologies GmbH

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株式会社TYOテクニカルランチ ポスト・プロダクション・センター(PPC)

Nuendo が実現する迅速かつ快適な MA ワーク

TYO テクニカルランチ (PPC) は、東京・広尾の大規模なポストプロダクションファシリティです。CM や企業 VP を中心に、様々なメディアのオフライン編集、オンライン編集、MA を数多く手がけています。そして同社の MA ワークのメインツールとして活躍しているのが、Steinberg Nuendo です。3部屋開設された MA ルームには、Windows プラットホームの Nuendo システムが導入され、Nuendo SyncStation との組み合わせで日夜フル稼働。また、ヤマハ DM2000VCM を Nuendo のフロントエンド(コントロールサーフェース/AD/DAコンバーター/モニターコントローラー)として活用することで、その操作性と機能性をさらに高めています。名うての“Nuendo使い”として業界では有名な同社のエンジニア、大場将吾氏と渡辺寛志氏の両氏に、Nuendo を選定された経緯とそのアドバンテージ、さらには最新の Nuendo 5 のインプレッションについて、じっくりと話を伺いました。

動作が速く、自由にカスタマイズできるのが Nuendo の魅力

Nuendo を導入したのはバージョン2がリリースされた直後で、2003年の暮れのことです。きっかけとしては、このスタジオでは長らくスタンドアローンの DAW を使用していたのですが、2部屋目の MA ルームを開設することになったときに、コンピューターベースの DAW も検討してみようということになったんですよね。それでいろいろ試してみた中で、Nuendo が圧倒的に優秀だったんです。とにかく動作が速くて、ファイル管理がよく考えられていた。それと、DSP ハードウェアを必要としないネイティブプロセッシングの DAW である点もいいなと。導入時のコストが低く抑えられるのもそうですし、コンピューターを強化すれば、それだけ処理能力が上がるというのはとても分かりやすいと思いました。もちろん、他にもネイティブプロセッシングの DAW はあったんですが、Nuendo の場合は明確にポストプロダクションユースをターゲットにしていた点が良かったんですよ。

実際に現場で使用して、最も気に入ったのが、とにかく動作が速いこと。Nuendo を導入したことによって、作業効率が格段に上がりました。例えばいま、この業界では Broadcast WAV が標準的なオーディオファイルフォーマットになってますが、Nuendo なら100個くらいの Broadcast WAV ファイルを一気にインポートしても、一瞬でタイムスタンプの位置に貼付けられるんですよ。他の DAW では時間がかかる作業なんですが、本当に一瞬で終わるんです(笑)。最近ではフィールドレコーダーでも Broadcast WAV で収録するので、この速さは本当に素晴らしいですね。僕が知っている MA スタジオでは、この機能のためだけに Nuendo を導入したところがあるくらいです。それと何かアクションを起こすために、再生や録音を止めなくていいのも使いやすいですね。再生しながらポンポンと素材を貼っていって、そのまま微調整して。再生したままで、ある程度形が組めてしまうんです。僕は撮影現場に Nuendo を持ち込むこともあるんですけど、そのときも収録しながら前のテイクを編集したりしていますよ。収録しながら編集なんかして大丈夫と思われるかもしれませんが、全く問題ありません。もちろん万が一のためにバックアップレコーダーは回しているんですが、一度もそれのお世話になったことはないですね。(大場氏)

僕はショートカットを自由にカスタマイズできる点が気に入ってますね。編集時は右手はマウスから離せないので、左手か届く範囲に頻繁に使うショートカットをアサインしておくんです。頻繁に使うショートカットというのは実際にはそれほど多くありませんし、不要なショートカットはミスタッチを防ぐためにもアサインされていない方が嬉しい。操作性を統一するためにショートカットを固定しているソフトウェアもありますが、Nuendo では設定を USB メモリにでも入れて持ち歩けば、どこでも自分のショートカットで操作することができますから。
加えて Nuendo は、メニューも自由にカスタマイズすることができるんですよ。Nuendo は、バージョン4から MIDI 機能がオプション扱いになりましたが、その他の使わない機能も隠しておくことができる。ショートカットも含めて、インターフェースを自由にカスタマイズできるというのはやっぱりいいですよ。(渡辺氏)

Nuendo システムのフロントエンドとして DM2000VCM を活用

最初に開設した MA ルームでは、長いことスタンドアローンの DAW をメインで使用していたんですが、昨年末(2009年末)にようやく Nuendo を導入しました。ですから今では、3部屋あるすべての MA ルームで Nuendo が稼働していることになります。他の DAW も置いてあったりするんですが、稼働頻度が最も高いのが Nuendo ですね。ウチで稼働している Nuendo は、1システムを除いて Windows プラットホームで、オーディオカードは RME HDSP シリーズを使用しています。AD コンバーターは、ヤマハ DM2000VCM が基本で、このコンソールはとても気に入っていますね。僕は基本的に Nuendo の中でミックスするので、ナレーション録り用のミキサー兼コントロールサーフェースとしても使用しているんですよ。DM2000VCM は、内部の自由度が非常に高いので、高価なコンソールよりも痒いところに手が届くんです。機能と価格のバランスが上手く取れたコンソールだと思いますよ。オーディオカードは RME のものが基本なのですが、1台だけある Mac 版の Nuendo では、Steinberg MR816X を使用しています。と言うのも、MR816X は Mac 環境で唯一、ダイレクトモニタリングが使えるオーディオハードウェアなんですよ。ちなみにその Mac は、Blackmagic Design のビデオハードウェアを使用し、メインの Nuendo と VST System Link で接続することで、ワークのビデオ再生用としても使用しています。非圧縮の HD ビデオも問題なく再生することができますよ。(大場氏)

完璧な同期精度の Nuendo SyncStation

もちろん、Nuendo SyncStation もリリースされた直後に導入しました。これはもう待ちに待っていた製品で、ずっと楽しみにしていたんですけど、実機の完成度は期待以上のものでしたね。まず何より、精度がもの凄い。Nuendo SyncStation は他のシンクロナイザーと違って、お互いのタイムアライメントを見て、ハウスシンクに対して調相をかけるタイプのシンクロナイザーなんですよ。要するにマスターに対して、スレーブを調相させるという働き方をするんです。ビデオの編集機に近いと言うか、本当の意味でのシンクロナイザーなんですよね。ですから精度が非常に高く、マスターと Nuendo はサンプル単位で完璧に同期するんですよ。そこまでカッチリ合わせ込まなくてもいいんじゃないかというくらい正確です(笑)。
また Nuendo SyncStation は、コストパフォーマンスも非常に高いと思います。パッと見は高価に感じるかもしれませんが、その機能を考えると、実はもの凄くコストパフォーマンスが高い。ハウスシンクから調相かかったワードクロックを4系統出力できますし、MTC の生成にも対応していて、もちろん 9-Pin コントロールも行えますから。こんな多機能なシンクロナイザーは、同じような値段では購入できませんよ。これまでは Nuendo の唯一のネックがシンクロナイザーだったんですが、Nuendo SyncStation の登場によって、同業者に迷わず薦められるようになりました。(大場氏)

プロ好みの新機能が多数追加された Nuendo 5

最新の Nuendo 5 も、早速現場で使用しています。Nuendo 5 では、いろいろな機能が強化されているんですが、個人的に一番嬉しかったのは、"Multi-mono to Interleaved File Convert" というファンクションですね。Nuendo では、マルチチャンネルのオーディオファイルはインターリーブファイルとして扱われるんですが、この機能によって、複数のモノファイルを簡単にインターリーブファイルに変換できるようになったんですよ。他の DAW では、モノファイルを基本としているものも少なくないので、異なるシステム間でファイルのやり取りがストレスなく行えるようになったのは嬉しいですね。これはビデオ編集システムで書き出した OMF ファイルを、Nuendo で扱うときにも重宝する機能です。それに音楽屋さんが持ち込む楽曲も、L/R で別ファイルの場合が多いんですよ。もちろん "Multi-mono to Interleaved File Convert" ではインターリーブファイルを新規に生成するわけですので、待ち時間はかかるんですが、最近のコンピューターであれば気にならないレベルですね。また、バージョン5では、インターリーブファイルから複数のモノファイルへの変換も簡単に行えるようになりました。僕が同録時に使用しているフィールドレコーダーは、Nuendo と同じようにインターリーブファイルで収録するんですが、そのファイルを分割したいというときにも便利ですね。(大場氏)

僕は "Automated Batch Export" という新機能がとても気に入っています。この機能を使用すれば、プロジェクト上に複数のマーカーを作成してエクスポートしたいトラックやネーミングに関する設定を行えば、あとはボタンをワンクリックするだけで様々なバージョンのファイルを書き出すことができるんです。要するに書き出しを自動化することができる機能なんですが、これは本当に凄い。こんなことが出来るのは Nuendo だけなんじゃないかと思いますよ。

僕らのような CM の仕事だと、1つのプロジェクトから30秒ものを5バージョン、15秒ものを5バージョン作らないといけなかったりするんですよ。それを各々マーカーを作成しておけば、あとはワンクリックですべてをファイル化することができる。これは本当に便利な機能です。(渡辺氏)

それと Automation Panel にアンドゥツリーが備わったのも嬉しいですね。要はオートメーションの履歴をツリー形式で確認して、アンドゥできるようになったわけですが、これは複数のオートメーションを比較する際にとても便利ですね。バージョン4で追加された Automation Panel はとても気に入っている機能で、"Suspend Read" と "Suspend Write" というファンクションがとても便利なんです。簡単に言うと、書き込まれたオートメーションデータをプレイバックに反映させないというのが "Suspend Read" で、それとは逆に、いま行っている操作をオートメーションデータとして書き込まないというのが "Suspend Write" なんです。例えば、各トラックの音色を作り込んだ後に、フェーダーを操作してオートメーションを書きますけど、全体のバランスが変わるわけですから、当然トラックごとの音色も修正したくなる。しかしそこで EQ に触れてしまうと、その操作までオートメーションとして書き込まれてしまうわけですよね。そんなときは "Suspend Write" を使用して EQ だけ無効にすれば、フェーダー操作はオートメーションとして書き込みつつ、EQ の操作は書き込まないという作業が行えるんです。また、オートメーションデータをプレイバックに反映させずに、素の状態で聴きたいというときは "Suspend Read" が活躍します。僕らの仕事では、そういった細かい作業が重要なんですよ。

Nuendo 5 の目玉機能の1つ、"VariAudio" も面白いと思います。オーディオのピッチやタイミングを自由にいじることができるので、1テイクしかないタレントさんのナレーションで、イントネーションを直してと言われたときに活躍しそうですね。また新しいプラグイン、"REVerence" も凄くいいですよ。IR リバーブなんですが、プリセットも豊富でとても使いやすいですね。(大場氏)