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プロデューサー石野卓球が語る Cubase の魅力

聞き手:ヤマハデジタルインストラクター 青木繁男

○ 石野さんは、Cubase の使い手として有名ですが、かれこれどのくらい Cubase を使われていますか?

かなり昔から使っていますね。90年に電気グルーヴのレコーディングでマンチェスターに行ったんですよ。それまで、MC50 とかその手の単独のシーケンサーを使っていたんですけど、マンチェスターの連中が Atari を使っているのを見て、便利そうだなぁと思って日本に帰ってすぐ購入しました。その後、Macintosh LC II と Cubase を使ってましたね。当時はモノクロで1小節の MIDI データを16個コピーするのもタバコ1本吸えるくらいの時間がかかっていましたね。その頃から考えるともうかれこれ、22年ぐらい Cubase を使ってますね。

○ 当時はハードウェアシーケンサーが主流でしたが、なぜそこで DAW を使用していたのでしょうか?

単純にマンチェスターの連中が使ってて簡単そうだったし、いわゆる MC シリーズの様なハードシーケンサーは画面が小さいじゃないですか。MIDI で打ち込んで、横スクロールで見渡せるっていうのがハードにはない魅力でしたからね。Atari でスピーチシンセがあったのも1つの理由です。

○ 数あるシーケンサーソフトの中でも Cubase を選ばれた最大の理由は?

最初に使ったのが Cubase だったので、手っ取り早くできるのは、やっぱり使い慣れた Cubase でしたね。色々使ってはみましたけど、Cubase のルールみたいなものが身体に染み付いているんで使いやすい Cubase に戻ってきてしまいますね。Cubase は直感的に使用できますし、カジュアルな感じが良いですね。他の DAW を使用していると「仕事」している感じがあるんですけど、Cubase はそう感じさせないカジュアルさがありますよね。

○ Cubase 6 や最新アップデート 6.5 の中で、お気に入りの機能などはありますか?

LoopMash 2 はおもしろいですね。ループものを使う事が多いので、タイミングをあわせるのに結構時間がかかってたのが簡単にできるのは魅力ですね。ループ以外に声の素材も使えるので、これはすごく使うと思います。
Cubase 6.5 で新たに搭載したソフトシンセの PadShop も面白いですよね。早速使わせていただきます。

○ 石野さんのメインの制作システムについて教えてください。

UAD を使用したかったので Windows を使用していましたが、この機会にまた Mac に戻そうかなと思っています。Cubase はハイブリッドなので問題ないですしね。UAD は外付けのサテライトを購入しようか検討中です。オーディオインターフェースは、RME の Hammerfall です。持ち出しすることが多いので、持ち運びしやすいシンプルなものを使用していますね。

○ かつて、ヤマハのサンプラー A5000 もご利用いただいていましたね。サンプラーは必須ですか?

今、最近一番使っているヤマハの製品は DX100 です(笑)。サンプラーの A シリーズもよく使いましたね。A5000 はフィルターが良かったですね。それに、ハードディスクを搭載したサンプラーでしたね。よくヨーロッパに連れていきましたね。

たまに、昔のデータを引っ張り出す時にハードサンプラーを使ってみるんですけど、やっぱり良いなと思う反面、手間を考えると億劫になってしまいますね。昔のデータがあるので S6000 と S3200 はまだ取ってあります。でも、今世紀電源入れてませんね(笑)。今ではソフトサンプラーを使っています。最初に使ったソフトサンプラーが HALion で、HALion (Ver.) 1 から使用していて、現在は HALion 3 を使用しています。

○ プラグイン(シンセ・エフェクト)は、どういったものを使用されますか?

OhmBoyz っていうディレイがあるんですが、それを一番使ってますね。フランスのメーカーのもので、スイッチが猫だったり凄い面白いプラグインなんですよ。ソフトシンセは、Z3TA+ と MASSIVE、Monologue を頻繁に使いますね。新しいものはだいたい使うんですけど、一回使ってそれっきりって感じのものも多くて、多種類なものを使うっていうよりは大体使うものが決まってて、意外にベーシックなものがほとんどです。そんなにこれじゃなきゃってものではないので、新しいものに置き換えられるのであればそれを使うという感じですね。

○ ハードウェアは、どのようなものを使用されていますか?

ハードウェアは良く使うんですが、PRO-One、TR-707、TB-303 とかの割合が多いですね。

○ ハードウェアがソフトに置き換えられている中で、あえてハードを使用する理由は?

特にモノシンセとかは、曲のなかで使った時の存在感がやっぱり違うんですよね。それって例えばソフトシンセでパラメーターを同じにすればハードと同じような音はでるんですけど、取り込んだときの存在感がやっぱり違うのと操作性ですね。マウスだとパラメーター1つずつしかいじれないですけど、シンセだといくつも同時につまみをいじったりできるので、手っ取り早いですね。

○ MIDI コントローラーを使ってソフトシンセをコントロールするよりハードウェアの方が良いですか?

やってる気分になりますしね。気分もやっぱり大事じゃないですか。でも、若い人にはおすすめしないですよ、壊れるし、場所取るし、高いしね(笑)。

○ 石野さんは、どういう流れで作曲されるのですか?

制作スタイルに関しては、だいたいある程度フォーマットは決まっているんですけど、まずドラムからって感じです。最近はサンプルライブラリーからドラムを組んでいって、そこにハードウェアのアナログシンセを足していくって感じですね。和音の楽器はだいたいソフトシンセが多いですけど、単音楽器はハードウェアを使用するケースが多いですね。

メロディから作曲するっていうのはないです、まずビートを組んでいって、そこにベースラインなり、コードなりループをつくって、そこで思いつくメロディだったり、そこに聞こえてくる空耳(そらみみ)を具現化していくと曲と言われるものになっていくんですよね。

たまに、メロディが浮かんだっていう時に自分の留守番電話に入れてて、次の日、自分で聞いた時に何言ってるかわからないみたいな時があって、イタズラ電話かなと思った事があります(笑)。歌のメロディとかはループを作ってそれをずっと聞いて、それにあわせて歌っていって、その思いつくメロディをどんどんそこに録っていって、最終的にそれを組み合わせて展開を作っていくような感じですね。

PC で作曲できるようになって、何をもって完成とするかっていうのがすごい大変ですね。それは便利になった分、ついてくるジレンマがありますよね。
その曲の一番良い瞬間を過ぎちゃう時があって、2ヶ月前の方が良かったのにいじることが目的になっちゃって、どんどん改悪していくっていう。10曲分のアイデアが1曲に詰まっちゃうっていう時もあって、見極めが難しいですよね。

○ 制作期間は1曲だいたい、どのくらいかけるんですか?

ものによりますけど、結構はやいほうだと思うんですけどね。歌ものとクラブトラックでは、違うんですけど、クラブトラックだと1日か2日くらいですね。早い時は半日のときもありますね。クラブトラックは時間をかければかけるほど、本質とかけ離れていくので、なるべく時間をかけないようにっていうのはありますね。歌ものや POPS ものは時間がかかりますけど、だいたい1週間くらいですね。

○ 最後に、22年間使用していただいている Cubase / Steinberg 社に対して何か期待されること、ご意見などありますか?

今まで感覚的に慣れてきた、ここにいけばこれがあるっていうとこが変わっちゃうと結構慣れるまで大変なんで、あまり Cubase をガラッと変えないで欲しいですね。今のところ使ってて不自由に感じることはないので、むしろ Cubase の機能に形をあわせてる感じなんで、そんなにここがこういう風になったらなぁっていうところはないですね。便利になるぶんには良いので、基本はあまり変えないで進化していって欲しいですね。

○ 今日はどうもありがとうございました。

石野卓球

1989年にピエール瀧らと "電気グルーヴ" を結成。1995年には初のソロアルバム『DOVE LOVES DUB』をリリース、この頃から本格的に DJ としての活動もスタートする。1997年からはヨーロッパを中心とした海外での活動も積極的に行い始め、1998年にはベルリンで行われる世界最大のテクノ・フェスティバル "Love Parade" の Final  Gathering で150万人の前でプレイするという偉業を成し遂げる。1999年からは1万人以上を集める日本最大の大型屋内レイヴ "WIRE" を主催し、精力的に海外の DJ/アーティストを日本に紹介している。2004年は約3年振りとなるアルバム『TITLE#1』、4月には『TITLE#2+#3』(2枚組)を2ヶ月連続でリリース。その海外編集盤『TITLES』はヨーロッパ・アジア各国でもリリースされた。2005年は4枚目となる DJ MIX CD『A PACK TO THE FUTURE』をリリース。2006年は TOKYO No.1 SOUL SET の川辺ヒロシと新ユニット "InK(インク)" を結成し、オリジナルフルアルバム『C-46』、翌2007年にはセカンドアルバム『InK PunK PhunK』をリリース。そして2010年8月18日には6年ぶりとなるオリジナル・ソロ作品『CRUISE』をリリースした。

www.takkyuishino.com
www.ink-net.jp

石野卓球 DJ Schedule

3/17 TUBULENCE 10th ANNIVERSARY / WAREHOUSE702(東京)
3/19 JUNBO MAX vs OTONOKO / CLUB MAGO (名古屋)
3/23 SPACE TIME GARAGE / eleven (東京)
3/24 Special Bank / YEBISU YA PRO(岡山)
3/28 LOST -2nd ANNIVERSARY / Saloon (東京)
3/30 Channel Troop project TAKKYU ISHINO vs KIHIRA NAOKI / Troopcafe (神戸)
3/31 CLASH / ageha (東京)
4/5 ~猛毒・復活再始動ライブ~ / LIQUIDROOM (東京)
4/6 STERNE / WOMB (東京)

電気グルーヴ LIVE Schedule

3/25 Star Fes. / お台場特設会場 (東京)
4/30 キューン20 / LIQUIDROOM (東京)