Steinberg Media Technologies GmbH

Creativity First

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中西亮輔
Ryosuke Nakanishi
(編曲家/作曲家/音楽プロデューサー)

SMAP、NEWS、柴咲コウなどの J-POP 系楽曲のアレンジをはじめ、「らき☆すた」などのアニメソング、PC ゲームのサウンドトラック、TV 番組のテーマソングまでを幅広く手掛ける作曲家/アレンジャー。

聞き手:
ヤマハデジタルインストラクター 青木繁男

青木:2009年は Steinberg 25周年イベント "The Steinberg Day" や CHIHIRO さんの新譜 "DRESS" のレコーディング等で大変お世話になりました。特に CHIHIRO さんの作品では、2年越しのサウンド&レコーディングマガジンでの連動企画もあり思い出深いものがありますね。

中西:こちらこそお世話になりました。2009年は、Cubase 5 の一言に尽きますね。

青木:制作をはじめとして近況をお聞かせいただけますか?

中西:MAKAI の新作アルバム『LOVE LITE』(*)で全曲のアレンジを手がけました。アルバム制作にあたり、アレンジはもちろんのこと、全曲の楽器レコーディングを Cubase 5 で行いました。Cubase 5 は大活躍です。

青木:最近、レコーディング環境を Windows 7 64bit 環境に移行されたと聞きました。その辺り、移行の経緯などをお聞かせいただけますか?

中西:現状、レコーディング(録音)中心で使用しています。Windows 7 64bit 版を使用した場合でも、Cubase は 64bit 版と 32bit 版を使い分けられます。仮に Windows 7 64bit の中で Cubase 32bit 版を使ったとしても RAM メモリの上限が Windows XP や Windows Vista よりも大きいじゃないですか。32bit 版にしか対応していないプラグインを持っていた場合でも、Windows 7 64bit 版の中で 32bit版 を使用するだけでも大きな恩恵を受けられます。現状、アレンジは Windows XP でやっていますが、Windows 7 に移行することも考えています。

青木:Windows 7 64bit 環境で既にレコーディングもされているんですね。

中西:はい、もう2曲録りました。特に問題なく快適に作業しています。

青木:何が変わったということはありますか?

中西:理由は分からないのですが、音の密度が濃くなった印象がありますね。この音を一度聞いてしまうと、以前の環境には戻れませんね。プロの商業スタジオで録ったような感じを受けます。Mac の場合も同じように、Max OS X 10.5 "Leopard" と Mac OS X 10.6 "Snow Leopard" だと音が違うと知人から聞いています。何パターンか試した結果、Snow Leopard の方が音が良かったらしいんですね(笑)。

青木:コンピューターのスペックを教えていただけますか?

中西:CPU は Core i7 の860、RAM は8GB、P55 チップセットといった感じですね。起動ディスク(HDD)は1万回転で、スイッチングで起動 OS を切り替えられるようにしています。

青木:I/O まわりのアウトボードも充実していますね。

中西:I/O は RME Multiface AE を使用しています。HA は AMEK 9098 DMA と SSL でメイン(NEUMANN U87Ai) を AMEK、アンビ(AKG C414)を SSL で録ることが多いですね。UNIVERSAL AUDIO 1176 はアコギと歌で使いますね。パッチベイで切り替えて使います。

青木:話を OS に戻しますが、音楽業界において Windows Vista という OS は様々な理由から歓迎されなく、あまり普及しなかったように思います。Windows 7 は Windows XP の次に音楽業界に定着する OS だと考えられますか?

中西:はい。Windows 7 を使い始めると、Windows XP は時代遅れ感すら感じます。インストールが楽になったのも大きいですね。

青木:現在メインで使用されています Cubase 5 の利便性などあれば教えて下さい。

中西:圧倒的にマルチチャンネルエクスポートですね。今までの自分達の費やしてきた時間を返してくれ、といった機能です(笑)。今までは書き出しに半日以上要していましたからね。バスさえ作っておけば、モノだろうとステレオだろうと何でも書き出せるので万能ですしね。何より早さがすごい。本当に書き出されているか不安に思って、思わず確かめましたが、確かに書き出されていました(笑)。あと、バージョン4.5から搭載されているオートスクロール機能も重宝しています。

青木:プロジェクトの予算によるところも大きいと思いますが、外部のスタジオと、中西さんのプライベートスタジオ "studio-R" との使い分けや、それぞれの利便性を教えていただけますか?

中西:"studio-R" のメリットとしては、まず小回りが利くことが挙げられます。アレンジが終わって、スタジオを手配して、というのを考えると、ここに気心の知れたミュージシャンを呼ぶケースが増えていますね。最近は弦や管のプレイヤーでも自分で DAW を駆使されている方も増えてきていますので、データのやりとりもスムーズです。スピードや意思の疎通といった面や、何より時間を気にせず制作・録音に没頭できるのは大きいです。ただ、人数の多い編成の場合は、商業スタジオを使用しますね。依頼が来た時点で外部のスタジオを押さえてもらうこともありますが、実は予算のある/なしが判断基準ではないかもしれません。

青木:さて、今日はこの "studio-R" で弦のレコーディングが行われる訳ですが、早速、ブースまわりをチェックさせてください。

中西:中西:自宅の一室を毛布と突っ張り棒を使って吸音しています。宅録特有の初期反射を抑えるのに効果抜群ですよ。是非商品化を検討してください(笑)。Cue ボックスも小さなミキサーとスタンドとを組み合わせて自作しています。

青木:マイクは何ですか?

中西:NEUMANN U87Ai と AKG C414 ですね。マイク庫もあります。ガットギター用、管用など使い分けています。管はコンデンサーよりも SM58 などのダイナミックの方が良い場合もあります。隣に見えているのが、コントロールルームに繋がる配線ダクトです。

青木:プレイヤーには大先生室屋さん(室屋光一郎さん)をお招きしましたが、本番の録りとは別に、Yamaha から発売されたばかりの新商品 POCKETRAK C24 を用いて、どんな風に録れるか試していただきました。実際に録音した音を聴いていかがですか?

中西:こんなにきれいに録れるとは思いませんでした。このサイズ、価格にして恐るべしですね。メトロノームやチューナーまで付いている!

室谷:譜面台に付けられるクリップはすごく良いですね。私もこの製品の実力を今回初めて知りましたが、音大の生徒さんにも受けると思います。

青木:(再び制作ルームに戻り)是非これからも Cubase をご愛用いただきたい訳ですが、「Cubase にこんな機能があれば」というアイデアがあれば教えていただけますか?

中西:和音の中でスプリットノート的な機能があると良いですね。例えば、ボトムノートやトップノートを別トラックに一発で移せると、弦や管のアレンジ時に重宝しますね。オーディオは充実していますので、MIDI の更なる強化を期待しています。

青木:ふと気付いてみると、モニタースピーカーも鍵盤も Yamaha ですね。

中西:モニターは NS-10M を使用していましたが、現在は HS50M を使用しています。他のメーカーのものも色々試しましたが、これに落ち着いています。NS-10M とサウンドが同系統であるのと、音量を絞ってもちゃんと鳴るので自宅スタジオのサイズにピッタリです。是非オススメしたいですね。鍵盤は P-200 を使用していますが、パネルに MIDI ON/OFF が付いているからの一言に尽きます。タッチも気に入ってます。あと、CP1 は欲しいです。知り合いの安部潤さんのところで試聴しましたが、音がすごくよいですね。


青木:今日はお忙しい中、ありがとうございました。

*MAKAI  『LOVE LITE』  2010.04.28 RELEASE !
UPCH-1771 ¥2,500(税込)

ジャパニーズハウスシーンの代表格、MAKAI。2010年4月28日、ユニバーサルミュージック移籍第一弾、約1年半ぶりとなる待望のオリジナル、通算5枚目のアルバム "LOVE LITE" の発売が決定!!

www.universal-music.co.jp/universalj/artist/makai/discography.php