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プラチナゲームズの音楽、効果音制作秘話に迫る

聞き手:ヤマハ 松村勝

○ 音楽を始めたきっかけと最初の楽器は何でしょうか?

山口 小学校の時に、音楽教室に友達と通い出したのがきっかけですね。その後、いったんやめまして、中学の時に吹奏楽部に入ってクラリネットを始めました。

進藤 僕は16歳の時です。好きなサッカーを足を痛めてやめてしまい、時間が出来たので、音楽を始めました。周りはギターばかりでしたが、人と違うことがしたいのと、浅倉大介さんの影響もあり、右も左もわからぬまま、シンセサイザー (ヤマハの QS300) を手にしました。松村さん (聞き手) に楽器店で接客してもらったことも確かあったと思いますよ (笑)。僕はヤマハのシンセじゃないとダメで、マスターキーボードはずっとヤマハですね。自宅でも KX8 を使用しています。ピッチベンドとモジュレーションがあの形じゃないとダメなんです。

○ 初めて曲/効果音を作った時の環境を教えて下さい。

山口 作曲しはじめた時に初めて購入したものは DTM のセットで、秋葉原に先輩と一緒に購入しに行きました。Windows 95 でした。セットで購入した際にバンドルでついていたソフトが初めて触ったシーケンサーでもあります。マウスで音符をポチポチと置いて作曲をしていました。作曲の勉強はしていなかったんですけど、ピアノとか吹奏楽をやっていたので、それで始められたのだと思います。

進藤 私はヤマハの QS300、PC9821 とソフトを購入し、初めて楽曲を作り始めましたが、マウスでポチポチするのが苦手で、そのソフトでは殆ど打ち込みをせず、QS300 のシーケンサーで打ち込んでいました。その後、いくら音源が増えても QS300 だけは変わりませんでしたね。あまりに使い倒しすぎて、10 キーのプリントも剥がれるわ、Enter キーも潰れるわ、で、買い直したのがヤマハ EX5S でした。今でも現役、お気に入りの1台です。

○ Cubase を導入した時期とその理由を教えて下さい。

山口 Cubase SX3 からですね。導入した一番の大きな理由は、「フリーズ機能」でした。Native Instruments KONTAKT を使用していたのですが、メモリをカツカツに使っていたので、非常に助かりました。当時は本当に画期的な機能でしたね。

進藤 私は Cubase 4 からです。それまでは Mac での制作環境だったのですが、ゲーム開発が Windowsベースということ、また BGM チーム (サウンドチームの中で主に BGM を制作しているチーム) でも Cubase を使用していたこともあり、Windows 環境での Cubase に移行しました。一番大きな理由としては、トラック数が豊富に使えるという事でした。長尺のイベントシーンなどでは900~1000トラックくらい使用するケースもあり、以前の DAW だとバウンスを繰り返さなくてはならず、苦労していました。あれはクリエイティブな作業では無いですからね。あとデフォルトでサラウンド制作ができる事も決め手になりました。

○ ゲームサウンドクリエイターを目指したきっかけは何だったのでしょうか?

山口 小学校の頃からゲームが好きでした。家が厳しく、週に一時間 (笑) しか出来なかったので、時間の制限なくゲームが出来る友達の家によく行ってしていました。その後、中学生くらいからゲームに対する憧れというものが強くなってきて、小遣いの大半をゲームソフトに費やしていました。音楽は人並みに聴いていましたが、ゲームの音楽にも名曲がある、という事に気付き始めて、いつしか、ゲーム業界を目指したいと思っていました。歌と同じ様に、ゲーム音楽にも、プレイした人の心に残る様な音楽があり、それに惹かれていました。その後、理系の大学に入学したのですが、DTM サークルに入ってはまってしまい、親に無理言って、音楽の大学に入りなおさせてもらって。音楽大学では冨田勲先生に師事していました。先生には作曲の基礎から打ち込み、音楽のサラウンド構成、さらには社会人としての振る舞いまで、指導して頂きました。今の自分がいるのも先生のおかげです。

進藤 私はこの業界に入ったのは最近で、それまでは楽器店の販売員でした。販売員の時に、クリエイターやアーティストと触れ合う機会も多く、自分も何かクリエイティブなことがしたいと考えるようになり、かねてから興味のあったゲーム業界を目指すようになりました。ゲーム自体はアーケードのアクションゲームが物凄く好きで、毎日ゲームセンターに通っている様な感じでした。ゲーム会社に就職しようと決めてからは、図書館に行ったりしてゲーム制作関連の本を片っ端から読みあさり、家ではサイコロに、音楽のジャンルやテンポ等を書いて、出た目の通りの曲を一日一曲作る。寝てるか勉強しているか音楽作っているか、という生活でした。

○ 楽曲、効果音制作に携われたゲームタイトルを教えてください。

山口 PlayStation®2 用ソフト「大神」 (CAPCOM 2006年) にコンポーザーとして参加しました。プラチナゲームズでは Xbox 360®、PlayStation®3 用ソフト「ベヨネッタ」 (SEGA 2009年) にメインコンポーザーとして参加しました。また、2012年7月発売予定の Xbox360®、PlayStation®3 用ソフト「マックス アナーキー」 (SEGA) にてコンポーザーとして参加しています。

進藤 プラチナゲームズ入社後すぐに Xbox 360®、PlayStation®3 用ソフト「ベヨネッタ」にサウンドデザイン (効果音) として参加いたしました。いきなりの大作でプレッシャーもありましたが、自分のレベルを上げる絶好のチャンスと、必死に頑張りました。

○ Cubase はゲーム音楽、効果音制作用途に向いていると思いますか? もし向いているようであれば、その機能や理由を教えて下さい。

山口 オーケストラ系の音楽からテクノ、ヒップホップなどのジャンルまで、オールマイティーに楽曲制作出来るところが向いていると思います。ゲーム音楽は幅広いジャンルを作らなければならないので・・・。「ベヨネッタ」ではオーケストラやジャズなどが中心で、殆ど MIDI で作成しましたが、「マックスアナーキー」では、オーディオのループを素材としたヒップホップ、ハウス、ドラムンベースなどの楽曲が中心でした。「ベヨネッタ」ではボーカルレコーディングなどもありましたが、歌詞つきの譜面も綺麗に作成出来ますし、とにかくなんでも出来る、という所が素晴らしいと思います。また、ゲームの場合は、動画に合わせて作成していきますので、まずラフを作って、動画に合わせた転調を移調トラックを利用して簡易的に試したりもします。そして、フリーズトラックを多用しています。曲を作り終わった後に、MIDI トラックを全て Mute してフリーズします。その状態にしておけば、プロジェクトを立ち上げた時に読み込む時間が短くて済みますし、ミックスダウンの時に修正が必要になれば、フリーズ解除して修正して、というやり方でやっています。これはメモリの節約ではない、フリーズ機能の良い活用法ではないかと思います。

進藤 ゲームの効果音といっても、「ゲームだからこういう効果音の作り方」という事は余り無く、映画やドラマなどの音響効果と同じだと思いますが、「効果音制作」という事でいえば、Cubase は非常に向いているソフトだと思います。効果音制作の場合、ライブラリを用いて制作をすることもあれば、生音を録って加工する場合もあります。そのどちらも手軽に色々とエディット出来る方が効率が良いですし、Cubase の場合、あらかじめエフェクター、エディット機能も一通りそろっていますので、非常に便利です。ゲームの効果音制作は、制作の後半に作業が集中することが多く、時間を掛けずにクオリティーの高いものを制作しないといけません。そういった点においても Cubase ではエフェクターのパラメーターを瞬時にコントローラーにアサインし、試すのに時間が殆ど掛かりません。内蔵エフェクターも一件シンプルですが、パラメーターが少ないほうが迷わずに狙った音になるのも良いと思います。また、ディレクターから「聞いた事が無い音にして欲しい」というリクエストもあります。そういった場合にはモジュレーション系のエフェクターや、Metalizer や Tranceformer、Pitch Correct 等を用い、MIDI コントローラーにパラメーターをアサインして、通常の使い方とは違ったアプローチで値を変化させて音を模索していきます。どの工程においても Cubase では狙った音がシンプルに手早く作成出来る所が非常に便利だと思っています。

○ Cubase に対して「この機能があれば・・・」とか「この機能がこうだったら・・・」というような要望はありますか?

山口 波形のプレビューが欲しいですね。Nuendo 5 の Wave Meter を発展させた様なもので、バウンスする前段階で、再生している時に波形が出て欲しいと思います。マスター出力の波形をプレビューし、自然なコンプ具合になっているかを確認したり、キックやスネアなどの音色作りをしている際に、各トラック毎にアタックやリリースを確認したり出来れば有難いと思います。簡易的に確認するのではなく、出来るだけ波形を大きく表示し、細かく見られると良いですね。後は、32bit のプラグインを使用しているので、メモリを外に開放できる仕組みは欲しいですね。

進藤 私は、メーター系のプラグインの充実を希望しますね。Peak、RMS メーター以外にもラウドネスメーターなどが標準で搭載されていると有難いですね。最近はラウドネスメーターのプラグインを使用してメーターを監視しています。シーンに応じてレベルを決めておいて、ゲーム全体で音量バランスの崩れがないようにしています。

山口 最新作の「マックスアナーキー」ではラウドネスメーターのプラグインを使用して、みんなで話しながら決めていきました。

進藤 その他は、EQ にアナライズ表記があると便利ですね。別プラグインでなく、ひとつの画面で見たいですね。あと、メーターバーがサラウンドになると物凄く細くなるので、それを太くしてほしいですね (笑)。

○ 使用している VST プラグイン (音源・エフェクト) をいくつか教えて下さい。

山口 Native Instruments 「KOMPLETE」 がメインになっています。常に核となるソフトです。その他、EAST WEST 「Quantum Leap Symphonic Choirs」、「Hollywood Brass」、Spectrasonics 「Stylus」、「Omnisphere」、Vienna Instruments 「Vienna Dimension Brass」 などで、エフェクトは Waves 「Platinum Bundle」、Sonalksis 「Essentials Bundle」、Audio Ease 「Altiverb」、BBE 「Sonic Maximizer」 などですね。iZotope 「RX2」 なども使用しています。特に KOMPLETE の中の KONTAKT が立ち上がっていない事はまずないです。 KONTAKT のライブラリーを揃えていっている、といった感じです。

進藤 私は、同じく Native Instruments 「KOMPLETE」。Audio Ease 「Altiverb」、「SpeakerPhone」、Waves 「Platinum Bundle」、「360° Surround Tools」、NuGen Audio 「VisLM Loudness Meter」、またピッチ修正ソフトにはかなり拘っていまして、Antares 「AutoTune」、Celemony 「Melodyne」 などや、QuikQuak 「Pitchwheel」、それから Sony 「SoundForge」 のタイムストレッチなども使用します。ピッチ修正ソフトによって、アルゴリズムが違うので、モノによって色々と試しています。あと、ライブラリ系のものは沢山揃えています。KONTAKT などで、効果音を鍵盤にアサインしておいて画像を見ながら、ポン出しすることもよくあります。ライブラリに無いものは、MA ルームにて生音を収録します。MA スタジオもメインは Cubase で、ミキサーは 01V96 を使用しています。

○ サウンドクリエイターチームは全員使っているソフトや環境はバラバラですか?

山口 BGM チームも SE チームも全員 Cubase が基本です。サブ的な役割で他の DAW を使用することもありましたが、最近は Cubase の機能で出来る様になりましたので、なくなりつつあります。プロジェクトごとに新しいソフト等を購入することになるので、全員が全員、全く同じというわけではないですが、Cubase で統一されています。全員で情報共有することが出来るので、便利に思っています。

進藤 SE も基本的に Cubase で統一されており、個人個人で欲しいものを申請して購入する形です。ですので、私の所では先ほどお話したピッチ修正ソフトが充実していると思います。

○ ゲームミュージッククリエイターを目指す人へのアドバイスをいただけますか?

山口 小さい頃から楽器をやってなくても、積極的に興味を持って楽器に触れて、仲間と音楽の素晴らしさを共有して欲しいです。そういう経験を積んでこそ、音楽で誰かににメッセージを伝えることが出来るんだと思います。特に学生さんには、そういった経験を沢山して欲しいですね。また、楽典や和声などの基本となる知識は押さえたほうが良いと思います。ゲームでは本当に様々なシーンの曲を作る事になるので、ある程度理論的に考える事が出来た方が、そのシーンにあった曲=正解に早く近づけます。あとは何よりも、学生生活を謳歌して、より豊かな経験をしてきて欲しいと思います。

進藤 私は異業種からの転職だったのですが、最初は「ゲーム会社ならどこでもいい」という考えを持っていました。しかし、もしそれで自分が作りたくない音を作る毎日なってしまったら、それは本当に苦痛でしかなくなってしまうと思います。やはりクリエイターがやる気に満ちて、こだわって作った音だからこそ、ユーザーに伝わるものだと私は思っています。ですので、自分がどういうゲームを作りたいかを見極めてください。ゲーム会社にもカラーがあります。自分が輝ける場所を選んでください。そうすれば良い音が生まれ、そしてまたその音を聞いたユーザーが業界を目指し盛り上げていく。そんなよい連鎖反応が続けば、ゲームというコンテンツは、最高のクリエイティブ作品になると信じています。

○ 本日は、お忙しい中、ありがとうございました。せっかくですので、Steinberg 新製品「CMC シリーズ」のファーストインプレッションをお聞かせ下さい。

山口 QC が素晴らしいと思います。アサインが簡単に出来て、あったら凄く便利そうです。CH と組み合わせれば、基本的な事は大体出来ちゃいそうですね。あまりコントローラーは使った事なかったですが、これならマウスでやるより直観的で早そうです。欲しいと思いました。あと、AI とFD も良いですね。AI はノブの部分が使いやすそうです。FD はコンパクトな中にフェーダーが4つあり、便利そうですね。今は机が機材でいっぱいなので、これだけ小さいのは非常に有難いです。マウスやキーボードの横にちょこんと置けそう。

進藤 私も QC ですね。先程もお話しましたが、エフェクターをノブでグリグリとコントロールするので、非常に便利そうです。FD も良いですね。こういったコントローラーで、フェーダー1本のものはありますが、1本だと心許無いので、4本あると便利ですね。理想は8本なので、そう考えると FD を二つと QC ひとつの組み合わせが便利だと思います。

○ ありがとうございました。

<プロフィール>

山口 裕史 (やまぐち ひろし)
プラチナゲームズ株式会社 ミュージックコンポーザー。音楽大学在学中、作編曲を冨田勲氏に師事。その後、2004年にクローバースタジオ株式会社にミュージックコンポーザーとして入社し、キャリアをスタートさせる。プラチナゲームズ株式会社創立時からのメンバーとして、同社のゲーム制作に深く関わる。

進藤 雅人 (しんどう まさと)
プラチナゲームズ株式会社 サウンドデザイナー。バンドでのインディーズ活動、楽器販売業務を経て、2008年プラチナゲームズに入社し、サウンドデザイナーとしてのキャリアをスタート。「ベヨネッタ」では数多くの効果音を担当した。

BAYONETTA ORIGINAL SOUNDTRACK
発売日:2009年11月4日
価格:5,000円 (税込)
レーベル:ウェーブマスター

BAYONETTA (ベヨネッタ) - PS3/Xbox360
発売日:2009年10月29日
価格:7,980円 (税込)
発売元:(株) セガ

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