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玉置成実、dream、下田麻美、桃井はるこなど数々のアーティストの作品に、コンポーザーやアレンジャーとして参加する「荒井洋明」さんといえば、"Dios/シグナルP" 名義で、ボカロPとしても活躍されており、一度はそのサウンドを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

本インタビューでは、都内某所にある荒井さんの自宅兼プライベートスタジオにお邪魔し、同氏が古くから愛用されている音楽制作ソフトウェア Cubase の魅力やメリット、楽曲制作テクニック、さらには Vocaloid との関わりなど幅広くお話していただきました。また、同氏は、Cubase 単体にて完結する作業などもあえて外部ハードウェアなども活用するといったこだわりをお持ちであり、今回はそのサウンドメイキングの秘密にも迫ってみたいと思います。

専門学校での授業がプロへの足がかりに

- 現在、コンポーザー/アレンジャーとしてご活躍されている荒井さんですが、そのご活動の経緯や手がけられた作品について教えください。

音楽の専門学校に通っていた時代に、楽曲のアレンジを実践的なコンペ形式で行う授業がありまして、その時に提出した作品を同行の卒業生でもあったレコード会社作曲家の方に気に入っていただけたのがキッカケですね。その後、楽曲のコンペにアレンジャーとして参加させていただく機会に恵まれ、幸運にもアレンジを採用していただけたのが玉置成実のさんの2ndシングル「Realize」だったんです。

- 学生時代には、すでにプロも認める技量を身につけられていた荒井さんですが、いつ頃から曲作りや、コンピューター使った音楽作りなどを始められたのでしょうか?

幼い頃から、エレクトーンを習っていたので、鍵盤を演奏することや曲を作るといったことは、常に身近な存在であったと思います。そんな影響もあってか、中学生のころには、コンピューターではなくワークステーションタイプのシンセサイザーに向かって曲作りをしていました。シンセサイザーを使いはじめた頃は、内蔵のシーケンサーで MIDI 接続した沢山の音源モジュールを鳴らし、最終的にはデジタル MTR (ハードディスクレコーダー)に録音を行って作品を仕上げていました。

約3年くらいは、そんなスタイルで楽曲をひたすら作っていたのですが、ある日どうしても楽曲に当時流行し始めていた Auto-Tune を使いたくなりまして(笑)。そのために、当時一番リーズナブルかつ手軽に Auto-Tune プラグインを利用できる環境をよくよく検討した結果、手に入れたのが Cubase (Windows 版) との最初の出会いでした。今でもそうですが、プラグインが使える DAW ソフトウェアといえば、はやり当時から Cubase が大定番だったんです!

- シンセサイザーをメインとした環境から、コンピューターと Cubase を使ったシステムへは、違和感なく移行することができましたか?

DAW ソフトは、Auto-Tune などのプラグインを利用するために導入したので、しばらくはオーディオ編集などの作業のみを、Cubase では行っていました。しかし、しばらくするとすぐに Cubase での打ち込みのしやすさや編集のしやすさ、そして何よりもサウンドの良さにすっかり魅了されてしまい、Cubase SX のリリースとほぼ同時に、コンピューターと Cubase をメインとした制作システムに完全移行しました。それからは、10年以上の長きにわたり Cubase を愛用させてもらってますので、僕にとってもはやこれ以外の作曲環境はありえないといった状態ですね!

Cubase と共に進化し続ける作曲スタイル

- Cubase SX から最新の Cubase 8 に至るまでの、サウンドや機能の向上については、どのような印象をお持ちでしょうか?

Cubase VST5 から、SX にバージョンアップした際には、ユーザーインターフェースのデザインが一新され、よりリアルでクールなデザインに変更されたのが、個人的にはとても印象的でした。そのルックスを見ただけでも、まさにモチベーションがあがるといった感じだったのをよく覚えています(笑)。もちろん、実際に触れてみると見た目の格好良さだけでなく、非常に直感的に使うことができる明解さにも驚かされました。Cubase 8 に至るまで、着実に各種編集機能やサウンドクオリティーも向上していますし、個人的にほぼ不満がない状態! 僕自身の作曲スタイルやサウンドも、 Cubase と出会ったおかげで今なお進化続けているといっても過言ではないと思います。

- 最近では作曲や編曲に限らず、ミックスやマスタリングなどのお仕事もされることが多いとお聞きしましたが?

有り難いことに、さまざまなサウンドに関するご依頼をいただくようになったこともあり、その目的に合わせて DAW ソフトウェアや制作環境を選ぶようにしています。僕にとっての手足であり、最高の作曲・編曲ツールである Cubase をはじめ、ミックス作業は Pro Tools HD、さらにマスタリング作業は WaveLab といったように、それぞれの長所を生かした適材適所のシステムを採用しているんです。

- それでは、1つの DAW ソフトウェアだけでは、作曲からマスタリングまでの作業を一貫して行うことは難しいのでしょうか?

いいえ、機能的には Cubase だけでもミックスやマスタリングを行うことが十分に可能だと思います。実際のところ、もはや Cubase 以外の DAW に切り替えて作業するほうが面倒なくらいではないでしょうか(笑)! ミックス作業に関しては、DAW ソフトウェアを使い分けることで、作曲・編曲作業とミックス作業の区切りを強制的に作り出し、気分や耳をリセットするといった意味合いもかなり大きいですね。

面倒な作業も楽しみながら自分だけの音に!

- 荒井さんのプライベートスタジオには、非常に沢山のシンセサイザーや音源モジュール、アウトボードなどが取り揃えられており驚かされました。

もちろん、ソフトウェアシンセサイザーやプラグインエフェクトも多用するのですが、それでは補いきれないハードウェアならではのサウンドが、とても好きなんです! Cubaseでオーディオ化したデータも、オーディオインターフェースからパラアウトし、アウトボードなどを通して、必ずレコーディングし直すようにしています。

- 最近では、コンピューター内部ですべてのサウンド処理を完結する、インザボックスミックスと呼ばれる制作スタイルも多くなっていますよね?

コンピューター内部でサウンド処理してしまえば、作業も非常に明解ですしトータルリコールもしやすいので、その目的によってはとても有用だと思います。しかし、あえて僕が DAW ソフトウェアを使い分けたり、外部ハードウェアを活用しサウンドメイキングを行うのは、自分自身が好みのサウンドにとことんこだわりたいこと、そして今となっては手間がかかり面倒と思われがちな作業を地道に積み重ねることで、僕にしかできないサウンドを生み出したいとの強い想いがあるからにほかなりません!

- なるほど、荒井さんならではのサウンドメイキングの秘密を垣間見た気がします。ちなみに、デモ制作や楽曲のスケッチといった段階でも Cubase をお使いなのでしょうか?

もちろん、簡単な楽曲のスケッチなどにも Cubase を利用しています。正直いって、僕にとって一番作業の効率は良いのは Cubase だけですべての作業を行うことなので、デモ制作といった段階ではミックスや簡単なマスタリングなども Cubase だけで完結してしまうことも多々ありますよ(笑)!

まずは1曲作ってみることから始めてみよう

- ボカロP(Dios/シグナルP)としての活動も積極的に行っていらっしゃいます荒井さんから見た、最近の Cubase と Vocaloid の関係について教えてください。

はっきり申し上げて、 Cubase をお使いのボカロPの皆さんは、Vocaloid Editor for Cubase(通称ボカキュー)を導入しない手はないです(笑)! もう、圧倒的に作業効率が違いますから、一回体験したらもう昔の制作環境に戻れなくなくなること間違いなしですよ。より手軽に Vocaloid を編集できることで、さらにボカロ曲としてのクオリティーもアップしますし、なによりも制作途中でのストレスが少ないので曲作りに集中できるのも非常に大きな魅力と感じています。

- それでは、最後にから Cubase で音楽制作を始めたい初心者ユーザーの皆さんへのアドバイスがありましたら、ぜひお願いします。

まずは、いろいろと難しいことは考えず、何はさておき1曲作ってみること、形にしてみることから始めてみてはいかがでしょうか?もちろん、それはオリジナル曲に限らず、大好きなアーティストの曲をコピーするのでも良いと思います。楽しみながら曲を作るうちに、 Cubase の操作が自然と身につくと同時に、作曲に必要な機能や疑問点なども見えてくるのでオススメです。 Cubase なら、あらかじめプロクオリティーの音源やエフェクト、編集機能、作曲支援機能などが豊富に搭載されており、それらは必ずや音楽制作の初心者にとっても大きな助けとなってくれるでしょう!

僕も、まだまだ Cubase のすべての機能を使いこなしているとは言えませんが、今後も自分にとって必要な機能を見極めつつ、作曲・編曲の頼もしい相棒として Cubase と末永くつきあっていきたいです。今後も、コンポーザー / アレンジャー、そしてボカロPとして、皆さんに喜んでいただけるような楽曲作りを目標に、自分自身楽しみながら精力的に活動し続けていく予定ですので、ぜひ応援よろしくお願いします。

荒井洋明

Dios/シグナルP の名義で、作曲、編曲、エンジニアなど行うクリエイター。玉置成実の「Realize」のアレンジャーでもあり、再録音版ベストアルバム『ReRections』が、KARENT より配信中。ボカロPとしても精力的にリリースを行っている。