Steinberg Presents Sound Roster 2015.11.17, 11.24 放送回
【ゲストプロフィール】
八王子P
http://hachiojip.net/
https://twitter.com/8_Prince
VOCALOID とダンスミュージックを融合したグルーヴィーでエレクトリックなサウンド。2009年12月から活動を始め、2012年2月に Sony Music よりメジャー1stアルバムをリリースし、2013年7月、2014年8月、2015年9月にはトイズファクトリーよりアルバムをリリース。また、様々なアーティストへの楽曲を提供も行っており、渡辺麻友(AKB48)の 3rd シングル「ヒカルものたち」の編曲を担当したことでも話題となった。DJ としての活動も行っており、アジアや南米、ヨーロッパなど、世界中を飛び回っている。
【放送中インタビュー内容】
- 普段、このラジオが放送されている時間(午前2時半)は何をしていますか?
僕結構、夜型になりがちなので、曲作ってたりとか、ゲームしてたりとか、ゲームしてたりとか。
- どのようなゲームをされるのですか?
最近は、いわゆる「ソシャゲ」と呼ばれる携帯で出来るゲームです。止まらないやつですね。
曲作りとかも、太陽が登ってる時間よりも、日が沈んでからと言うか、深夜とか周りが静かになってからの方が、集中してスラスラできますね。作ってる音は、なんか滅茶苦茶うるさい音で、おもいっきりキックが鳴ってるような音なんですけど。
- 八王子P さんが最初に音楽をやろうと思ったきっかけを教えて下さい。
そこはシンプルで。ずっと音楽が好きで…と言うわけではなくて、高校の時に出来た友達がバンドマンで、すごく音楽好きだったんです。それで、色々な音楽をお勧めされて、聴いていく中で「音楽面白いな」って思い始めて、自分で作ってみたいなって思ったんです。でも、そのバンドマンの友達から、苦労話しをよく聞いてたんで、「仲間で音楽やるのって大変なのかな」と個人的に思って…。
でも、同時期に出会ったクラブミュージックも大好きだったので、打ち込みだったら一人で黙々と出来るし、僕には合っている音楽スタイルだと思って。そんで、打ち込みにのめり込んでいった感じですね。
- 初めて打ち込みで作った曲は今でもどこかで聴けるのでしょうか?
いや、さすがに一番最初に作った曲とかは、公開しなかったです。最初は、インストの曲ばっか作ってたんで。でも、歌物が作りたいってなった時に、周りも、基本的にクラブミュージックのインスト曲作ってたので、ボーカルとかを気軽に頼める友達がいなかったんですよ。それで、ニコニコ動画とかで、いわゆる「VOCALOID」のことはずっと知ってたし、曲も聴いてたので「じゃあ、ボカロに歌わせちゃおう」みたいな。だから、ボカロP になるきっかけも、すごく、シンプル。「いつか、使ってやるぜ」っていうよりは、なんかこう、自然の流れで使った感じですね。
- では、作った曲をシンガーに依頼することはなかったのでしょうか。
そうですね。ボーカリストさんの為に書き下ろして、歌ってもらって…みたいのは、本当に音楽作り始めて数年後の話というか。ボカロを先に使い始めちゃったんで、最初に歌ってもらったのが人間じゃなくて、VOCALOID でした。
- 元々は、シンガーさんに依頼するのが面倒臭いって感じだったのでしょうか?
まあ、ね。それもありますね。
- 最初に使った VOCALOID はなんでしょう?
ボカロを聴かない方でも、おそらく名前は聞いたことあると思うんですけど、一番有名な「初音ミク」っていう VOCALOID です。今でも、一番多く使いますね。
- 初めて「初音ミク」を使って作った曲はリリースされているんですか?
ニコニコ動画に一番初めにアップした曲は、2009年12月なんですが…さすがに一作目からは怖かったんで、練習がてらに何曲か作ったりはあったんです。何曲目なんだろう…でもまあ、ほんとに、数曲作って、ポンとアップした感じなので、もう、ほぼほぼ、VOCALOID 曲の処女作って言っていいような。
- 動画サイトへの投稿からいきなり有名になってしまうのはすごいですね。レコード会社の方が、「八王子P さんすごいな」となったんでしょうか?
当時は別に「プロになろう」みたいな気持ちで VOCALOID 曲をアップしたワケじゃなくて、本当に、趣味の一環と言うか。でも、一番最初にニコニコ動画に発表した「エレクトリック・ラブ」って曲が、運良くすごく再生されて。それから、すごいお仕事の依頼や、その当時はボカロ全盛期っていうのもあったので「コンピレーションCDに参加しませんか?」と、たくさんの依頼を頂けるようになって。これは、もしや、チャンスなんじゃないかと思って。
- 日本だけでなく、台湾や色々な海外イベントに出演しているとお伺いしました。DJ イベントなどでしょうか?
そうですね。基本は、DJ パフォーマンスと言うかライブアクト的な。海外で僕が呼ばれるイベントって、いわゆる、アニメとか VOCALOID とかの大きいイベントなんです。それで、その中の、こう何て言うのかな、演目の一つみたいな感じなので、ゲストとして DJ をさせてもらったりとかってのが多いです。
だからまあ、やっぱりアジアとかが多かったりするんですけど、南米や、ヨーロッパだったり、そういうところに呼ばれたりもします。
- フランスではアニメが結構人気だと聞きますが、南米にもそのようなイベントがあるんですね。
行きますね。今って、アップした動画がどこの国で見られてるとか、分かったりするんです。それこそ、南米だと、メキシコとか、ブラジルとかも、行かせていただいて、想像がつかないというか。残してくれてるコメントとかに、色んな言語があるから、いろんな国の人が聞いてるんだなってのは、もちろん分かるんです。でも、なんか、全然ピンと来ないじゃないですか。で、現地に行って、盛り上がってるところとかを実際に体感すると、「ちゃんと海外の人達も聞いてくれてるんだな」ってゆうのが、ようやく実感として出てくる、みたいのはありますね。
- 日本のクラブ DJ でも、海外にたくさん呼ばれて行く人は本当に一握りなので、色々な国に行くボカロP の方は、すごい貴重ですね。
はい。
- 人間関係が面倒という話を聞いて「一人でやってみよう」とスタートしてから、ここまで来たというのは、すごいですね。
そうなんです。ネガティブなところから全部スタートしてるので、だからこそ、最近、コラボとか、ボーカリストさんと一緒に仕事させて頂いたりとかっていうのがすごい楽しいですね。
- 渡辺麻友さんの 3rd シングルの編曲などもされているんですよね。
はい。そうですね。もう、結構、僕の中の人生のハイライト的な(笑)
- 曲作りは、基本的にパソコンで作られているんでしょうか?
はい。海外の DJ イベントとかで、家を出なきゃいけないことが、最近すごく増えたので、それこそ海外の EDM アーティストに倣ってというか、Mac Book Pro 1台で曲を作ってます。
- 1台でですか?
はい。僕の曲って、ほぼほぼ全部、ソフト音源で完結する作り方なので、そのパソコン1台で作ってますね。
- メインの DAW ソフトは何を使っていますか?
まぁ、これ Cubase って言えたら一番良かったんですけど、SONAR というソフトを使わさせて頂いております。
- SONAR がお好きな理由などはありますか?
単純に、一番最初に使ったのが SONAR っていうだけです。あと、実は僕 Cubase も持ってまして、最近結構、Cubase も使ったりするんですよ。基本は、SONAR で曲を作ってるんですけど、オーディオの処理とかは Cubase が優秀で。
例えば、ピッチを弄ったりだとか、そういうエディットをやっていくと、Cubase の方が便利なんです。ピッチエンベロープっていって、ボーカルが「あ、あ、あ、あ、あ、あっ」って上がっていくような、なんか良く聴く効果音だったりとか、スネアの音とかが、「デュデュデュデュデュデュ」って上がっていくような。多分クラブミュージックとか、お好きな方は、聞いたことあるような、処理だと思うんですけど。そういうのは、結構 Cubase でやっちゃったりしてますね。
- VOCALOID を使う場合、VOCALOID Editor for Cubase があれば、Cubase の中で VOCALOIDの ソフトが立ち上げられますよね。
はい。それこそ、この番組にも一度ゲストで出演したことのあるゆよゆっぺ君。彼がまさに、Cubase 使ってて、たまに合作したりとか、一緒に曲作ったりするんで、彼の作業とか、後ろで見てたりすると、ちょっと便利そうだな、みたいな(笑)。
- 曲を作る時によく使うエフェクターなどはありますか?
そうですね…今、クラブミュージックに関しては、シンセで出せる音って、その”シンセでの差”ってほぼ無くなってきてると思うんですよ。滅茶苦茶マニアックな話になっちゃいますけど、基本的にオシレーターの差というか、元の波形の差なんで。それで、めちゃくちゃ画期的な波形があるかって言われたら、新しいシンセサイザーにも、そんなに入ってるわけでもないし。
それに、使い倒してるシンセのほうが使いやすいってのもあるから。やっぱり、音作りってどの人もそうだと思うんですけど、シンセで弄り倒した音を作るって言うよりは、外部のエフェクトの差ですよね。
だから、僕がよく使うのは、ディストーション系。音を太くしたりとか、歪ませてカッコ良くしたりっていうのは、やっぱ、処理として多いですね。
- ハードシンセは使わずに、ソフトシンセで作られるのですか?
僕は、ソフトで完結しちゃうことが多いですね。家の環境には Roland JP8080 っていうトランスとかの「名機」と呼ばれるシンセがあります。
- 小室哲也さんも使っていたシンセですね。
そうですね。ただやっぱ、ハードシンセってなると、それ一台で鳴らすってのはほぼ無いですね。どうしても今の音に比べると、薄く聞こえちゃうところもあれば、逆にそれが良さだったりもするんですけど…。僕がよくやるのは、そのまんま鳴らすよりは、音をレイヤーして重ねていく音作り。シンセ一台で表現するよりは、何台もシンセを立ち上げて、一つのフレーズをシンセ何台も使って、重ねて音創りしていきます。
- 八王子P さんの曲は、シンセがすごく太い印象があったのですが、レイヤーしているんですね。
ありがとうございます。そうですね。やっぱクラブミュージックとかって、フレーズをたくさん詰め込むよりは、少ないフレーズをシンプルに、でも、力強く聞かせるみたいな。だからこそ、一本太くする。僕はその一個のフレーズに対して、シンセをいくつも重ねていったりとか。そこで結構面白いのが、シンセの音だけじゃなくて、例えば、それにちょっと、生音を足してあげるとか、そのシンセのフレーズの中に、あえて、ギターの音を混ぜてあげたりとか。上の方にちょっとピアノとか、ベルの音をちょっと、乗せてあげたりとかするだけでも、ニュアンスが全然変わったりして。そういうの、ソフトだったら好きにできるじゃないですか。
だから本当に、全く正解とかってないと思うんで、自由な発想で。極端な話、音が歪んでても、かっこ良ければいいと思うんです。そういう感じで僕は作ってます。
- VOCALOID ライブラリを複数使用されていますが、「この曲の時はこのライブラリを使おう」という意識はありますか?
ありますね。でも僕の場合は、普通のボーカリストさんに頼む時の考え方と全く一緒です。例えば、普通のボーカリストさんに頼むんであれば、当然、キーレンジと言うか、「そのボーカリストさんが一番輝くメロディーライン」があると思うし、そのボーカリストさんのバックボーンもあるだろうし…ってのを考えながら、みんな曲を作ると思うんです。ボカロも、当然声が違うんで、それぞれが得意としているキーレンジもある。あとは、何ていうのかな、ボカロの特徴として、キャラクターがしっかり付いてる。初音ミクは青いツインテールの女の子。鏡音リン・レンは、幼い感じの兄弟とか。なんか、そのキャラクターを僕なりに解釈して、「この歌詞だったらスゲ~かわいい感じだから、リン・レンに歌わせてみようかな」とか。「ちょっと、これは大人っぽい曲になったから、巡音ルカに歌わせてみよう」とか。なんか、そういう感じです。
- 巡音ルカは大人キャラなんですね。
一応設定だと、20歳かな? みんな(他のボカロキャラクター)よりちょっと、お姉さん。
- そうやって分けるんですね。なるほど。
そこも、本当に、ボカロの面白いところです。僕はそうやって作ってますけど、人によって本当に違うんです。例えばボカロの処理の仕方も、僕はあえてボカロにしか歌えないようなメロを作ったり、「ロボットボイス」っぽく加工したり、「人間じゃない」ってとこをすごく意識して作るんですが、逆に「いかに人間に近づけるか」っていうのをコンセプトに作ってる方もいらっしゃる。
ボカロの使い方には「正解」もないし、人によって違うんで、だから、スゲー面白いよっていう(笑)
- 八王子P さんは作詞も行われていますが、作詞の際はキャラクターになりきるのでしょうか?
VOCALOID の事を歌った曲とかに関しては、そうだったりするかもしれないですけど、ボカロの事を歌うような…キャラクターソングのような曲は、今は結構少なくなってきてて、いわゆる普通のポップスみたいのがすごく多いです。だから、僕の曲も、普通に恋愛の曲とかは、「ボカロになりきる」ってことはあまりしないかもしれないですね。普通に、そこは「作詞」としてやって、出来た歌詞を見て「あっこれだったらミクに歌わせて OK だな」って判断が多いかもしれないです。
- すごいですね。もう VOCALOID は人間みたいですね。
今、話してると、確かに考え方は、本当にそうですね。だから、人が歌っても全くおかしくない。
(一同笑)
- 渡辺麻友さん等が、編曲を頼むのも分かりますね。素晴らしい歌詞を書かれていますし、人間がそのまま歌ってもおかしくない。そしてこんなにコアな楽曲制作もされている。
なんか色々マニアックな話、すごいしちゃいましたけど。
(一同笑)
- それでは最後に、八王子P さんみたいになりたい方へ向けて、アドバイスが有れば、お願いします。
アドバイス!そうですね、なんていうか、続けることだと思います。曲作りって、スゲー大変だと思うんです。それこそ1曲作るのって、最初はすごく大変だと思うんですけど、諦めないで一曲作りきってみると、きっと、色々見えてくる。「あっ、これがやりたい!」とか、逆に「自分こういう曲は向いてないんだ」ということを知れたら、それはすごくいいことだと思うので。「音楽をやりたい、作ってみたい」と思ったら、まずは、一曲作りきってみるっていうのが大事なんじゃないかと思います。
- そして、それを継続する。
そうですね。やっぱ継続は力なりじゃないですけど、そしたら絶対、その一歩一歩着実に進んでいけると思うんで。
そして、進みすぎて、僕をちょっと超えないように。って(笑)。
- 芽は摘んでしまうんですね。
そこは、ちょっと、芽は摘んでいこうと。はい(笑)。
(一同笑)
【織田's クエスチョン】
- 八王子P さんは、以前お仕事で石川に行く際に、能登空港に着陸出来なくて、羽田から、また、羽田に戻ってきたと言うびっくりした経験をお持ちだそうですね。最近、他にもびっくりした出来事ってありますか?
いや、それを超えるびっくりした出来事あるかな…。ちょっと、その時のエピソードを詳しく話しますと、石川のイベントに、飛行機で行くことになったんです。で、離陸する前に、なんかアナウンスが入ったりするじゃないですか。「向こうの天候が悪いため、着陸できない可能性があります」とか、「時間がかかるかもしれません」みたいな。でも、「そんなの、まぁ無いだろう」って大体の人は思うじゃないですか。
- はい。
で、まあ僕も、「そんなん有るはずね~よな」って寝ながら行ったんです。 そしたら、うっすら眠い中で、ふわっと一回下がって、また、グインと上がって行くんすけど、なんか、ちょっと、行けませんでした、みたいな。で、もう一回トライというか、ちょっとグルグル回って、もう一回トライしますってアナウンスが入って、もう一回トライしたんですけど、また同じく、グインと上がってからアナウンスが入って、羽田に戻ります、と。マジかよ。
- 石川までは行ったけど、また、そこから折り返して、羽田に戻ってきたということですか?
そうですね。石川の上空くらいまで行ったけど、天候が悪くて着陸できなくて、羽田に戻ってきて。その後、新幹線で、終電とかで電車に揺られながら、向こうのホテルに着いたのが、12時過ぎとかでした。
- でも、無事にお仕事自体は出来たんですね? 不幸中の幸いですね。
そうですね、はい。だから、なんか、まあ、ある意味貴重な経験というか。でも、びっくりしましたね。あっ、こうゆうこと、本当にあるんだって言う。
- まあ、でも、事故がなくて良かったですね。
そうですね…。
【織田's クエスチョン 2】
- 八王子P さんは「Amazon プライムDay」の時に、「空気清浄機」と、「ミラーレス一眼」を衝動買いしてしまったそうですが、今までで一番印象に残っている、衝動買いってありますか?
わっ、なんだろうな、パッと出てくるものあるかな…衝動買い。そうですね、なんだろうな…まあ、でもミラーレス一眼は相当衝動買いでしたけどね。
- 結構、高いのですか?
まぁそれでもそうですね、いくらだったかな。まぁ半額以下とかにはなってたんですけど、それでも、確か3~4万とかしたんで。で、まだ箱開けた状態で、全く使ってないですね…。
- 買っちゃった、やっちゃった的なやつですね。
そう、だから、これぞ、衝動買いですよね、本当に。空気清浄機は、部屋でバリバリ空気を清浄してくれてるんですけど、ミラーレス一眼は、もう完全にインテリアになってますね。
- ちなみにミラーレス一眼ってどういうものなんですか?
それすら、分かんないっすからね(笑)。一眼って、カメラんの中ではスゲ~良く聞くから、なんか多分スゲ~んだろうなと思って(笑)。
(一同笑)
これ持ってれば、俺もまあ、ちょっと一目置かれんじゃないかな、みたいな。
買ってはみたものの、ほんとに使ってないですね。
- あー、まさに衝動買い。
まさに、本当に衝動買いですね、あれは。