WaveLab Pro/Elements 9 徹底活用ガイド
著・監修:藤本 健
第07章 オーディオ解析ツール活用術
WaveLab には数多くのオーディオ解析ツールが搭載されています。スペクトラム解析やオシロスコープの使い方、ラウドネスメーターの使い方、エンコーダーチェッカーなども見ていきましょう。
07-01 レベルメーターでチェックしたい
WaveLab には、さまざまなオーディオ解析ツールが搭載されていますが、そのもっとも基本的なツールが音量を表示するためのレベルメーターです。まずは、そのレベルメーターの使い方から見ていきましょう。
手順1: オーディオレベルメーターを表示する
まず画面上部のウィンドウのタブから「レベルメーター」をクリックし、オーディオレベルメーターを表示させます。もしタブに「レベルメーター」が見当たらない場合は、「メーター」メニューから「レベルメーター」を選択します。
手順2: オーディオデータを再生する
プレイボタンをクリックしてオーディオを再生します。するとレベルメーターが動き出し、現在再生中の音量レベルをチェックすることができます。
【コラム】レベルメーターの基本的な見方
レベルメーターはモノラル、ステレオ、マルチチャンネル、いずれの場合でもそれに適した形で表示することが可能です。ここでは最も一般的なステレオの場合における見方についてみてみましょう。
レベルメーターは大きく上下に分かれていますが、まず上部がレベルを表示するところで、上が L、下が R となっています。また明るい色と暗い色の2種類のメーターがありますが、明るい方がリアルタイムにレベルの状況を表すピークレベルとなっています。一方、暗い方は平均ラウドネス (RMS) が表示されるようになっており、実質的な音量をチェックすることができます。
画面下部に表示されているのは左右のバランスを示すパンメーターです。上のパンメーターには、チャンネル間のピークレベル差が表示され、レベルバーが左右に移動して、どのチャンネルのラウドネスが最大かを示します。
また下のパンメーターはチャンネル間のラウドネスの平均差を示しています。これにより、たとえば、ステレオ録音が適切に中央揃えされたかどうかを視覚的に確認できます。
【コラム】モニタリングするオーディオソースを設定する
WaveLab でレベルメーターなど、各種オーディオ解析ツールを使う際、デフォルトの設定では、再生しているオーディオデータの状況がモニタリングできるようになっています。しかし、設定を変更することにより、オーディオインターフェースからの入力信号をモニタリングしたり、オーディオエディターの編集カーソルの位置の状況をモニタリングすることも可能です。
こうした設定はオーディオエディターまたはオーディオモンタージュの検出タブのモニタリングセクションを開くことで、設定できるようになっています。
07-02 ラウドネスメーターでチェックしたい
普通に信号を解析して表示させるレベルメーターと、人が感覚的に実感する音量の動きには少し相違があります。そこで、ラウドネス曲線などを考慮し人が感じる音量を表示するようにしたものがラウドネスメーターです。ここでは、そのラウドネスメーターの使い方を紹介していきます。
手順1: ラウドネスメーターを表示する
まず画面上部のウィンドウのタブから「ラウドネスメーター」をクリックし、ラウドネスメーターを表示させます。もしタブに「ラウドネスメーター」が見当たらない場合は、「メーター」メニューから「ラウドネスメーター」を選択します。
手順2: オーディオデータを再生する
プレイボタンをクリックしてオーディオを再生します。すると、ラウドネスメーターが動き出し、現在再生中の音のラウドネスをチェックすることができます。
* 入力信号やある指定範囲内データをモニタリングしたい場合はオーディオエディターの検出タブから設定します。
【コラム】ラウドネスメーターの基本的な見方
ラウドネスメーターは、聴感上どのくらいの音量であるかをグラフで示すものですが、主にチェックすべきところが、画面下に表示されるI、S、Mという3つのレベルです。一番下の M は100ミリ秒ごとに400ミリ秒単位のラウドネスを表示する瞬間的なメーターとなっています。真ん中の S はショートタームラウドネスを意味しており、1秒ごとに3秒単位のラウドネスを算出して表示しています。そして一番上のIは平均ラウドネスを表示するものとなっています。
これら3つのグラフは随時動くわけですが、M の動きを元にして、ラウドネスの出現する頻度をグラフにあらわしたものが、一番上に表示されるラウドネスカーブです。これをみることで、ラウドネスの傾向をチェックすることが可能となります。
07-03 フェーズスコープでチェックしたい
WaveLab にはステレオ信号の左右の広がりを視覚的に把握できるメーターであるフェーズスコープが搭載されています。フェーズスコープは一般的にリサジューメーター、位相メーター、フェーズメーターなどとも呼ばれるものですが、そのフェーズスコープの使い方を紹介していきます。
手順1: フェーズスコープを表示する
まず画面右上のウィンドウのタブから「位相スコープ」をクリックし、フェーズスコープを表示させます。もしタブに「位相スコープ」が見当たらない場合は、「メーター」メニューから「フェーズスコープ」を選択します。
手順2: オーディオデータを再生する
プレイボタンをクリックしてオーディオを再生します。すると、フェーズスコープが動き出し、現在再生中の音の位相の状況をチェックすることができます。
* 入力信号やある指定範囲内データをモニタリングしたい場合はオーディオエディターの検出タブから設定します。
【コラム】フェーズスコープの基本的な見方
フェーズスコープは2つのステレオチャンネル間の位相と振幅の関係を示すメーターです。基本的に縦に広がれば音量が大きいことを表し、横に広がれば音が広がっていることを表します。したがってここに表示される形状が丸みを帯びたものになっていれば、左右ともにバランスのとれた信号であることを意味するのです。
もし垂直に表示される場合は、左右チャンネルが同じである、つまりモノラル信号になっていることを示します。一方、水平になっている場合は左右ともに同じ信号であるけれど、位相が反転し、逆相になっていることを意味します。
それに対し、45度の角度で表示されることもあります。右上がりの45度で表示される場合、右側の信号のみに入力があり、左側の信号がないことを意味し、左上がりの45度の場合はその反対になっていることを表します。
07-04 スペクトロスコープでチェックしたい
WaveLab には周波数スペクトラムをグラフィカルに表示させるためのスペクトロスコープが搭載されています。FFT 解析し、60の個別の周波数帯域として表示させることで、全体的な概要を把握できるスペクトロスコープの使い方を紹介していきます。
手順1: スペクトロスコープを表示する
まず画面左上のウィンドウのタブから「スペクトロスコープ」をクリックし、スペクトロスコープを表示させます。もしタブに「スペクトロスコープ」が見当たらない場合は、「メーター」メニューから「スペクトロスコープ」を選択します。
手順2: オーディオデータを再生する
プレイボタンをクリックしてオーディオを再生します。すると、スペクトロスコープが動き出し、現在再生中の音の周波数スペクトラムをチェックすることができます。
* 入力信号やある指定範囲内データをモニタリングしたい場合はオーディオエディターの検出タブから設定します。
【コラム】スペクトロスコープの基本的な見方
スペクトロスコープは、FFT (高速フーリエ変換) 技術を使用して周波数グラフを表示することで、正確かつ詳細な周波数解析をリアルタイムに表示することを可能にしたシステムです。
周波数帯ごとに色分けされ、低い音は左側で赤く、高い音は右側で青や紫で表示され、計60段階になっています。対応する帯域の上に水平線として表示され、最近のピーク値/最大値を示すようになっています。
なお、より細かな解析結果を見たい場合はスペクトロメーターを利用します。
07-05 スペクトロメーターでチェックしたい
WaveLab には周波数スペクトラムを細かく FFT 解析した上で、詳細にまたリアルタイムに表示させるためのスペクトロスメーターが搭載されています。そのスペクトロメーターの使い方を紹介していきます。
手順1: スペクトロメーターを表示する
まず画面左上のウィンドウのタブから「スペクトロメーター」をクリックし、スペクトロメーターを表示させます。もしタブに「スペクトロメーター」が見当たらない場合は、「メーター」メニューから「スペクトロメーター」を選択します。
手順2: オーディオデータを再生する
プレイボタンをクリックしてオーディオを再生します。すると、スペクトロメーターが動き出し、現在再生中の音の周波数スペクトラムをチェックすることができます。
* 入力信号やある指定範囲内データをモニタリングしたい場合はオーディオエディターの検出タブから設定します。
【コラム】スペクトロメーターの基本的な見方
スペクトロメーターは基本的に07-04で紹介したスペクトロスコープと同様の情報を表示させるメーターです。スペクトロスコープでは、カラーリングされた棒グラフにより、全体の概要を把握することができる一方、FFT (高速フーリエ変換) 技術による周波数解析結果をより細かく正確に表示させるのがスペクトロメーターです。
これを見ることで、ほかのオーディオデータとの傾向の違いなどを詳細に比較することも可能になります。なお、ほかのオーディオデータとの違いを比較する場合には、スナップショットを撮っておくのが便利です。スナップショットを撮るには、「機能」メニューから「スナップショットを追加 」を選択します。スナップショットを撮るごとに異なる色になるので、比較しやすくなっています。
07-06 ビットメーターでチェックしたい
PCM の信号では、その音量をビットを用いて記録しています。そのリアルタイムでのビット数を表示するのがビットメーターであり、WaveLab はそのビットメーターを備えています。ここではビットメーターの使い方を紹介していきます。
手順1: ビットメーターを表示する
通常画面左上に「ビットメーター」のタブがあるので、これをクリックしてビットメーターを表示させます。「ビットメーター」のタブが見当たらない場合は、「メーター」メニューから「ビットメーター」を選択します。
手順2: オーディオデータを再生する
プレイボタンをクリックしてオーディオを再生します。すると、ビットメーターが動き出し、現在再生中の音の使用ビット状況をチェックすることができます。
* 入力信号やある指定範囲内データをモニタリングしたい場合はオーディオエディターの検出タブから設定します。
【コラム】ビットメーターの基本的な見方
ステレオの場合、左チャンネルと右チャンネルに分かれて表示されますが、内側のメーターは、使用されているビット数を示し、外側のメーターは、最近、何ビットが使用されたかを示します。
一番上の over セグメントは、クリッピングを示します。また下の below セグメントが点灯している場合は、24 ビットを超えていることを示します。この場合、ビットメーターは 24の上位ビットを示します。また below セグメントは余分な下位ビットの存在を示しています。
inter セグメントが点灯している場合は、オーディオデータを通常の 24 ビット規模では正確に表現できないことを示します。たとえば、ビット間に浮動小数点値がある場合がこれに該当します。
実際の用途としては、ビットメーターを見ることでディザリングが必要かどうかを確認することができます。再生しているときや、16ビットまでミックスダウンしていて、16ビット以上が使用されることをビットメーターが示している場合、ディザリングを適用する必要があります。
また、オーディオファイルの実際の解像度を見るのにも有効です。たとえば、ファイルが24ビット形式でありながら、16ビットしか使用されていない場合や、32ビットのファイルで24ビットだけを使用している場合、これをすぐに見つけ出すことができます。
07-07 オシロスコープでチェックしたい
WaveLab にはオーディオをオシロスコープでチェックできる機能が搭載されています。そのオシロスコープの使い方を紹介していきます。
手順1: オシロスコープを表示する
まず画面右上のウィンドウのタブから「オシロスコープ」をクリックし、オシロスコープを表示させます。もしタブに「オシロスコープ」が見当たらない場合は、「メーター」メニューから「オシロスコープ」を選択します。
手順2: オーディオデータを再生する
プレイボタンをクリックしてオーディオを再生します。すると、オシロスコープが動き出し、現在再生中の音の波形の様子をチェックすることができます。
* 入力信号やある指定範囲内データをモニタリングしたい場合はオーディオエディターの検出タブから設定します。
【コラム】オシロスコープの基本的な見方
オシロスコープでは、再生する音や入力される音を、リアルタイムに波形表示させることができます。通常ステレオ信号の場合、上が左チャンネル、下が右チャンネルとして独立して表示することができ、横軸が時間、縦軸が音量の大きさを表します。
なお、オシロスコープ左上にある「+−」ボタンをクリックしてオンにすると、上半分が左右チャンネルの和、下半分が左右チャンネルの差として表示されるようになります。
07-08 ウェーブスコープでチェックしたい
モニタリング中の音をリアルタイムに波形表示させていくウェーブスコープ機能を使うことで、ファイル全体の中の現在の位置づけなどを確認することができます。ここではそのウェーブスコープの使い方を紹介していきます。
手順1: ウェーブスコープを表示する
まず画面右上のウィンドウのタブから「ウェーブスコープ」をクリックし、ウェーブスコープを表示させます。もしタブに「ウェーブスコープ」が見当たらない場合は、「メーター」メニューから「ウェーブスコープ」を選択します。
手順2: オーディオデータを再生する
プレイボタンをクリックしてオーディオを再生します。すると、ウェーブスコープが動き出し、現在再生中の音の波形を表示することができます。
* 入力信号やある指定範囲内データをモニタリングしたい場合はオーディオエディターの検出タブから設定します。
【コラム】ウェーブスコープの基本的な見方
ウェーブスコープは波形をリアルタイムに表示させていくための機能なので、オーディオエディターやオーディオモンタージュにあるデータを、そのまま再生する場合は、同じ波形が表示されていきます。
ただし、エフェクトを使って再生したり、マスターセクションで音量を調整した場合などは、最終的な出力音がウェーブスコープに表示されるため、その出力音を確認することが可能になります。
07-09 3D 周波数解析をしたい
WaveLab のオーディオエディターには、そこに収録されているデータを 3D 周波数解析し、立体的なグラフィカルな画像で表示する 3D 周波数解析機能が装備されています。これはリアルタイム表示ではなく、ファイル全体に対する解析機能ですが、その使い方を紹介しましょう。
手順1: オーディオエディターにデータを用意する
3D 周波数解析は、入力信号などを直接見ることができるわけではなく、あくまでもオーディオエディターにあるデータ全体を解析するものなので、まずはオーディオファイルを読み込んだり、録音するなどして、オーディオファイルを用意します。
* 3D 周波数解析はオーディオモンタージュには適用できません。
手順2: 検出タブを開く
オーディオエディターの検出タブをクリックし、検出タブを開きます。
手順3: 3D 周波数解析ボタンをクリックする
検出タブにある「3D 周波数解析」ボタンをクリックします。
手順4: 3D 周波数解析結果が表示される
画面に 3D 周波数解析結果が表示されます。画面はX軸が時間、Y軸が周波数、Z軸が音量として表示され、画面左上のホイールコントロールを使うことで、さまざまな角度から表示できるようになっています。
07-10 オーディオファイルを比較したい
WaveLab には、2つのオーディオファイルに対して、その2つに違いがあるのかをチェックしたり、差分がどのようになっているかを確認できる比較機能が備わっています。たとえば Wav ファイルと MP3 ファイルの差分をチェックしたりすることができるので、その方法を紹介しましょう。
手順1: オーディオエディターに2つのデータを用意する
まず比較する2つのオーディオデータをオーディオエディター上に用意します。それぞれタブで切り替えられるようにしておきます。
手順2: 検出タブを開く
オーディオエディターの検出タブをクリックし、検出タブを開きます。
手順3: 「オーディオファイルの比較」ボタンをクリックする
検出タブにある「オーディオファイルの比較」ボタンをクリックします。
手順4: 比較する2つのファイルを指定する
「オーディオファイルの比較」ダイアログが開くので、ここに用意した2つのファイルを指定します。
* 差分を波形で確認したい場合は「差分ファイルを作成」にチェックを入れておきます。
手順5: 「OK」をクリックして、比較結果を見る
「OK」をクリックすると、2つのファイルの比較が行われ、その結果が表示されます。また手順4で「差分ファイルを作成」にチェックを入れた場合は、差分の波形もタブ切り替えで表示することができます。