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飯嶋慶太郎 (Studio301) インタビュー

 

テレビドラマや映画、CM 等において、画面から出ている様々な音や BGM は今やそれらの作品を構成する上で必要不可欠なものとなっています。それらの音をまとめ、選曲し、時にはその場に無い音までを創り出し、より効果的に視聴者に作品を印象付ける「音響効果」という仕事があります。

数々の映画、CM、イベント等の音響効果を担当し、参加作品が世界の名立たる映画祭等にノミネートされている飯嶋慶太郎氏は、Nuendo や WaveLab を駆使してそれらの作品を手がけています。

過去から現在に至るまで様々な DAW を使用してきた氏に、現在メインで使用している Nuendo、WaveLab について、最近、大阪郊外に新設された氏のプライベートサウンドアトリエにて、語っていただきました。

- 最初に、飯嶋さんが音楽、音響効果を始めたきっかけ、そして今までにどの様な機材やソフトを使用してきたかお聞かせいただけますか?

3歳からピアノを習っていまして、それがスタートですね。「機材」ということで言えば、父親がカセットレコーダーを持っていて「押せば録音出来る」ということで、自分で演奏したものを録音して、それを聞きながら弾いて遊んでいました。カセットレコーダー二台を使って再生しながら録音して… という様に MTR の様な事をして遊んでもいました。友達とラジオ番組みたいなものを録音して遊んでいたりもしました。小学生くらいでしたが、その頃に「機械を使うと面白いことが出来る」ということを覚えたと思います。

FM ラジオのエアチェック等もしていました。カセットデッキのタイマー機能を使って音楽番組を録音して聴いていました。演奏家である親の影響でクラシックコンサート等はよく行っていましたが、ポップス等はその FM エアチェックで色々と覚えていきました。 その後、高校の時くらいに、ヤマハのシンセサイザー V50 を手にしました。いまでも忘れられないですが、そのキャッチコピーが「音を創造するマシーンから、音楽を創造するマシーンへ」というものでものすごく衝撃を受けて購入しました。FM シンセだったのですが、リズムは PCM 音源で、今でも「バシッ」という V50 のスネアの音は忘れられません。学生のころはバイトしたりお年玉で機材ばかり買っていましたね。DAT も買いました。お年玉で(笑)。

そのころもピアノは続けていましたが、楽譜をシーケンサーでおこして、どんな曲か理解してから練習するとものすごく上達して先生にびっくりされました。左手から入力していたのですが、時間が無くて右手の方が間に合わず、右手が妙にたどたどしかったりして…(笑)。シンセサイザーを手に入れてから三年で50曲くらい作りました。作ったものを DAT に録音して… という事をずっとやっていましたね。

音響効果は専門学校に入ってしばらくして、先生の音楽劇作品を手伝うことになったのが最初ですね。当時としては珍しくサラウンド作品でして、もちろんサラウンドパンナーとかありませんでしたから友人と二人で AUX1、2、3、4 を使って、「いっせいのーで」で少しずつ音を送って効果音を回したり色々とやっていました。同時期に、ラジオドラマの音響効果も手伝ったことがあって、開港したばかりの関西国際空港まで収録に行ったりしましたね。

仕事として本格的に始めたのは平林勇監督の短編映画が最初でした。2008年頃からサラウンドの勉強会に定期的に通っていた時期があり、そこでの事例の一つにフォーリー(映像に足音等を一つ一つ付ける仕事)の録音やミックスの話がありまして、実演されている所を目の当たりにして、あまりの職人の世界に鳥肌ものでした。

ちょうど同じ時期に、以前から交流のあった平林監督から短篇映画制作の話があり、作品をサラウンドでやってみたいと相談をいただきまして、迷わず引き受けました。それが初めて音響効果を担当した作品です。仕込用に YAMAHA MSP3 や HS10 を買いそろえ、02R96 から出力させました。 セミナーで学んだ先輩エンジニアの方々の技を見よう見まねで試行錯誤し、シーンに必要なあらゆる効果音や情景描写を創り込みました。今聴くと荒削りな所もあったように思いますが、その作品が翌2009年のベルリン映画祭にノミネートされた事を機に、監督はじめ多くの方々から音響効果のお仕事をいただけるようになりました。

- パソコンを使った音楽制作を始められたのはいつごろでしょうか?

専門学校に入って出会ったのが、OPCODE Vision でした。それは衝撃的でしたね。いままで40文字*2くらいの液晶で音楽制作していたのが、パソコンのモニターで出来るのか! と。その年の夏にはすぐに Mac と Vision を買いましたね。専門学校時代に出会った先生方からは様々な影響を受けています。スタジオで音源山積みにして MTR とシンクさせたりしながら、歌も録音したりして…。楽曲制作に関して色々な事を学びました。友人達と学内レーベルを作ってカセットテープも販売していました。

Vision をしばらく使っていましたが、その後、Logic を使用する様になりました。Vison の時代はハードウェアシンセや音源がメインでしたが、Logic に移行してからしばらくして、ソフトシンセ等がメインになってきましたね。ソフトシンセを使う、というのは Logic で経験してきたと思います。駆け出しのころは、カラオケの打ち込みの仕事等もよくしていました。

そういえば、その時、Cubase も使用していましたね。何故かと言うとリスト編集等は Cubase がやりやすくて。

現在、使用しているソフトシンセは、Nuendo NEK 内蔵のもの以外で言えば、VIENNA INSTRUMENTS Symphonic Library、EAST WEST/QUANTUM LEAP Sympnic Orchestra、NATIVE INSTRUMENTS KONTAKT をよく使います。音響効果で使用する効果音等は内蔵ソフトシンセで作成して、加工して使用しますね。

- Nuendo や WaveLab はいつ頃出会ったのでしょうか?その時の印象はいかがでしたか?

サラウンドを始めてからですね。2010年頃でしょうか? Nuendo は前から知っていましたが、詳しい中身は友人の紹介で知りました。レストレーション等で WaveLab の評判は特に聞いていて、気にはなっていました。音楽制作よりも音響効果の仕事が増えてきた頃に、ある時、Nuendo を使用した音響効果の現場を見学する機会がありまして、その時に音響効果の仕事にはかなり最適な DAW だな、と思いました。一番印象深かったのは Native なのに大規模なシステムを必要とする DAW 並みのことが出来てしまう事で、このスペックがこの値段で出来てしまうのか、ということがショックでした。それは現在も思っていて、スタジオでの作業につかれた時等は、アトリエのソファに Note PC だけ持って行ってリラックスしながらサウンドデザインをしていることもあります。

細かい機能で言えば、いっぱいあるのですが、特に、イベントの範囲を決めた後で、波形だけを動かす事のできる機能が特に印象的でした。フォーリーで何回かオンリーで録音したものを次々と変えて聞いていける、というところが、ものすごく衝撃的で、しかも、それを普通にさくさくとやっていることに感銘を受けまして、これは音響効果マンにとっては一番便利な DAW だな、と。

また、2012年に「SPACE BALL」という仮設型プラネタリウムの音響効果を担当したのですが、その時のメイン DAW が Nuendo でして、サラウンドのルーティングの自由さ、サラウンドパンの柔軟さに衝撃を受けました。 複数のサラウンドフォーマットを一つのプロジェクト内で混在させる、というのは Nuendo でしか出来ないのではないでしょうか?「SPACE BALL」の時は、8.0ch、4.1ch、5.1ch を混在させていましたので、それが出来る、というのが素晴らしいと思いました。他の DAW だと 5.1ch なら 5.1ch しか出来ませんから。

ちょうどその頃に、メインで使用していた DAW の頭打ち感というか、これ以上の進化は無いかな、ということを感じていて、勤務している専門学校でもその DAW を使用していたのですが、私が経験してきた Cubase / Nuendo のメリットを話すと、学校も Cubase を採用する事になりまして、そして自分も Nuendo 導入に至りました。以前、Cubase を少し触っていたこともある、という親しみもありましたし。

- 他の DAW に比べて Nuendo、WaveLab の特に優れていると感じる部分はどの辺でしょうか?

先ほど、お話しました、イベントの位置を動かさずに波形を移動出来る、サラウンドの自由度が高い、という事ももちろんですが、「落ちない」ということが一番ですね。Nuendo は本当に落ちない。仕事をしている上で、本当にありがたい。

あと、Cubase にしろ、Nuendo にしろ、「推奨環境を満たしやすい」という事がありますね。推奨環境を満たすパソコンを買いやすい、と言うか。その PC と外付けの HDD があれば十分に動きますから。映画のプロジェクトだと、作業中に尺がどんどん増えていきますが、結構負荷を欠けていても落ちないので、要らないストレスを感じることが無くていいですね。 あと、VariAudio は音響効果でよく使います。と、いうのは、フォーリーで録音した音等を、その音の重さ、といいますか、映像に合わせて音の質感を変えてなじませる作業をする時に便利です。ピッチとタイムストレッチを一度に簡単に触れる、しかも標準機能だ、という事が非常に便利ですね。もちろん歌のピッチ修正にも使いますが、音響効果でも大変、重宝する機能と思います。他の DAW でもピッチシフトはもちろん出来るのですが、ここまで手軽に、さらに音質にも問題なく出来る、というのは Cubase / Nuendo しか無いと思います。また、Nuendo は複数のマーカートラックが作れる、という点は非常に重宝していますね。尺の長い映画ではプロジェクト中に沢山の目印が必要になってきます。シーン1、シーン2、といったシーンごと、音楽のきっかけ、フォーリーの必要箇所などを別々に打っていけますし、ダビング(映画の最終 MIX のこと)当日に気になった点にその場でマーカーを打っていけば、手直しの場所にすぐにアクセス出来るというメリットもあります。更にオーディオミックスダウンが複数トラック同時にできる点、さらに Nuendo は、シーンごとの書き出しも同時に出来る点が最高ですね。ものすごく時間の短縮になっています。

あと、レストレーションは完全に WaveLab 頼りですね。こんなノイズまで取れるのか! という風に思います。ファイル一括変換なども、音響効果で一緒に作業しているスタッフが作ってきたファイルがたまに 44.1kHz だったりするのですが、それを一括で変換する時に使用します。もちろん、CD のマスタリングにも使用します。WaveLab は、なんでもマルチにつかえて重宝してますし、「あって当たり前」という感じですね。何にでも使っています。

- サラウンド作品も数多く手がけていますが、Nuendo のサラウンド機能はいかがでしょうか?

Nuendo を導入するきっかけとなった、先ほどお話した点もそうなのですが、付属の IOSONO Anymix も素晴らしいですね。遠くの方から近づいてくる、という表現をする時は音量コントロール、EQ 等も全て何回も繰り返してオートメーションを書かなければならないですが、Anymix だと PAN を動かすだけですみますから、時間の節約にも非常になります。サラウンドパンの作業の手間さを知れば知るほど Anymix の便利さが分かります。

- 飯嶋さんは専門学校の講師としても教鞭をとられています。学校では Cubase を使用して音響効果や作曲等を教えていらっしゃるそうですが、Cubase を教材として使用していて良かったと感じられる所はありますでしょうか?

学生たちが卒業後も安心して使える教材だと思っています。一つは Nuendo が先にある、という点、これは、最近 Nuendo を導入している音響効果会社やポストプロダクションが増えている、という事で、Cubase を使用していると Nuendo も基本は同じ操作性ですから、学生たちがそういった会社に巣立っていった場合、安心出来ます。あと、一つの学科の中で作曲と音響効果を教えていますから、どちらの能力も伸ばすことの出来るバランスのとれたソフトウエアだと思います。そして、Win / Mac の両方に対応し、どちらのデータもどちらでも読める事。入学してきた学生は Win / Mac どちらでも選べるし、卒業してからもどちらにするか選べる、というのは大きいです。いわば、現在 / 未来、作曲 / 音響効果、Win / Mac  — 色んな所でクロスプラットフォームですね。そう言われてみると、Cubase / Nuendoってすごいですね、「おたくは Windows? Mac?」って話題になりますもんね。他の DAW では滅多にないですよ。

あと、ヤマハのグループ会社である、ということ、ヤマハミュージックジャパンが取り扱っている、ということは非常に大きいですね。サポート面でとても安心出来ます。 今(2015年2月)、Cubase 所有の学生は Nuendo を60,000円で買えると聞きましたが、凄いですよね。教えている学生もさっそく何人か申し込んでいました。彼らは授業でサラウンドでの音響効果も体験していますが、 Anymix を聞かせると興奮していましたから。

- Nuendo や Wavelab にこんな機能がついていたらいいのに、というものはありますか?

ドップラー効果のかかるプラグインが欲しいですね。ヤマハの DM/0 VCM シリーズに搭載されている、SURROUND POST PACKAGE のプラグイン化を熱望しますね。ドップラーも再現しようとするともの凄く大変ですから。

あとは、オープンリールテープシミュレーションですね。これは Yamaha Vintage Plug-inCollection とかである音質の変化のシミュレーション、ということではなく、ファイルを読み込んでオープンリールを手で動かした音がなるものが欲しいです。これはなぜかというと、アニメとかの効果音は昔からこういった手法で作られていたのを、みんな意識せずに聴いて育っていると思うんです。なので、テープとかでこう作る、という風にやってみせると合点がいくという感じがするんですね。PCDJ 用のコントローラで動かせると最高ですね。

WaveLab はもっと GUI をよくしてほしいですね(笑)。慣れてしまったら問題ないですが、もう少し取っ付き易い GUI になってほしいですね。Nuendo と同じ様にしてほしいです(笑)。WaveLab はそれ以外にリクエストは無いですね(笑)。

- 本日はありがとうございました。

飯嶋慶太郎 プロフィール

  • 3歳よりピアノを始める。
  • 高校生の頃よりシンセサイザーやコンピューターに興味をもち、音楽制作を開始。
  • 2008年に5.1chサラウンドに対応した制作用スタジオ「Studio301」を開業。
  • 2009年にサラウンドでの音響効果で参加した短編映画が翌年の国際映画祭にノミネートされるなどして、本人も驚く。
  • 現在はスタジオ業務のほか、学校法人コンピュータ総合学園・神戸電子専門学校の講師を勤め、音響効果の授業や、5.1ch サラウンドのセミナー等を定期的に開講。また、高校生を対象とした演劇での音響効果の指導等も行なっている。
  • 2014年8月、大阪府郊外にスタジオを移転、リニューアル。

音響効果を担当した主な作品

番組

  • 『しまじろうのわお!』(2012年~ テレビ東京系列)音響効果
    *「World Media Festival(ドイツ)」金賞受賞

映画

  • 『aramaki』(2009年 平林勇監督作品)5.1ch 音響効果
    * 第60回 ベルリン国際映画祭 短編部門ノミネート
  • 『Shikasha』(2010年 平林勇監督作品)5.1ch 音響効果
    * 第63回 カンヌ国際映画祭 監督週間 招待作品
  • 『663114』(2011年 平林勇監督作品)音響効果
    * 第68回 ベネチア国際映画祭 オリゾンティ部門ノミネート
    * 第66回 毎日映画コンクール 大藤信郎賞受賞
    * 第62回 ベルリン国際映画祭 Generation 14plus 特別賞受賞
    * 第10回 ファントーシュ国際映画祭 ベストサウンド賞受賞

 

  • 『solo』(2012年 米澤美奈監督作品)音響効果
    * 第65回 ロカルノ国際映画祭 短篇部門ノミネート
  • 『NINJA & SOLDIER』(2012年 平林勇監督作品)音響効果
  • * 第63回 ベルリン国際映画祭 Generation 14plusノミネート
  • 『SOLITON』(2013年 平林勇監督作品)音響効果
    * 第64回 ベルリン国際映画祭 Generation 14plusノミネート
    * グアナファト国際映画祭(GIFF)2014 ノミネート
  • 『しまじろうとフフのだいぼうけん』(2013年 東宝)音響効果
  • 『しまじろうとくじらのうた』(2014年 東宝)音響効果
  • 『しまじろうとおおきなき』(2015年 東宝)音響効果

イベント

  • 宇宙体感シアター『SPACE BALL』18.2ch サラウンド音響
    * JPPA AWARD 2013 サウンドデザイン部門 ゴールド賞 受賞

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