
大島崇敬
Su-kei Oshima (OMFACTORY)
サウンドクリエイターとして J-POP、ゲーム音楽、CM 音楽など様々な音楽制作を手掛け、現在は主に(株)メガフォースコーポレーションのプロデューサーとして活動。同社所属アーティストのプロデュースを多数行っている。
また後進育成の為、キャットミュージックカレッジ専門学校にて特別講師を勤める。
(株)OMFACTORY 代表取締役 omfactory.net
聞き手:ヤマハデジタルインストラクター 松村勝
松村:2009年は Steinberg 25周年イベント "The Steinberg Day" に出演いただいたりと大変お世話になりました。まずは近況をお聞かせいただけますか?
松村:そもそも Cubase との出会い、Cubase を選んだ理由は何だったんですか?
大島:12年くらい前でしたかね、当時はレコンポーザーを使っていたんですけど、Cubase VST を初めて使いました。バーチャルインストゥルメントを使いたかったんです。Neon などのプラグインを使ってましたね。ハードウェアシンセとソフトシンセを併用して楽しんでいました(笑)。2002年、Cubase SX に移行したのをきっかけに、完全に Cubase 環境になりました。ミキシングも Cubase のみで行うようになりました。Cubase を選んだ理由は、当時の非力な PC でも飛び抜けてパフォーマンスが良かったんですね。また、時代背景的に VST 規格が急速に普及し始めていて、Cubase が最も安定して動作していました。Cubase SX になってからは、音質の良さが飛び抜けていました。オーディオ編集も Nuendo 譲りで早かったですね。実は Nuendo 1.5 を使っていた時期もありました。シリアルのドングルでしたね(笑)。
松村:そんなCubaseですが、大島さんは恐らく日本一早くといっても過言ではないくらい、Windows 7 64bit 環境で Cubase 5 を使用されていますよね。どうですか、制作の快適さは PC 環境によって大きく違いますか?
大島:ここが Cubase (VST) プラットフォームの魅力だと思います。Windows 7 は発売日に買いましたよ(笑)。64bit 環境は Windows Vista から使っていましたので、3年くらいになります。Windows 7 は本当にサクサク動きますので、非常に恩恵を受けています。私は Windows 7 との相性はアプリケーションによって異なると思うんですけど、Cubase 5 との相性は本当に抜群ですね。僕の場合、1日に10時間くらい Cubase で音楽を作っていますが、年間ですと3000時間くらい Cubase を触っていることになります。ということは、1分1秒の1アクションが1秒でも早くなることで、年間に直すと随分効率が違ってくるんですね。Cubase の場合は PC のパフォーマンス(スペック)と作業効率が比例しているので、大きな恩恵を受けられるんです。ソフトウェアは随分先の動作をしていると思います。今、Windows XP ユーザーが急速に Windows 7 に移行しています。3rd Party 製品の対応も早く、64bit 環境も普及してきていますので、Windows 7 は間違いなく音楽業界のスタンダード OS となると思います。

松村:ちなみに、大島さんがメインで使用されている PC のスペックを教えていただけますか?
大島:Core i7 ベースの Xeon 3.2GHz が2発、8コアの16スレッド CPU になりますね。RAM メモリは24GB、秒速300MB 以上の SSD が5台、バックアップ用に SATA3 と USB3.0 の HDD を使っています。10GB のデータコピーが約1分で終わります。私の場合ですと、1つのプロジェクトで使用するデータ容量が20~30GB ですので、3分あればバックアップができますね。近々、6コアの Xeon を2発にして12コアの24スレッド CPU 環境にしようと思っています。
松村:さすが、PC 事業部を擁する会社だけあり最強マシンですね。ところで OMFACTORY という会社の社長を務める大島さんですが、OMFACTORY 社の事業展開をお聞かせいただけますか?
大島:音楽制作会社であるということに加え、DAW 専用の PC の開発・セットアップ事業という柱もあります。楽器店、放送局、学校関係、スタジオ、クリエーターと取引先は多岐に渡ります。いずれも音楽制作に関わる業界ということです。わが社のスタッフも全員がクリエーターである、ということが方針でもあります。学校や各種セミナーの講師も務めています。キャットミュージックカレッジ専門学校では週1回、後輩の育成も兼ねて講師を務めさせていただいております。
松村:非常に理に適ったシステムな訳ですが、これは Cubase を核とした Native ベースシステムだから実現していると言っても良いですか?
大島:はい、その通りです。CPU を使用する Cubase システムだから実現できます。専用のハードウェアが必要な訳でなく、I/O、A/D、D/A、マイクプリ等を自由に組み合わせられること、これは Native ベースシステムならではのメリットです。
松村:非常に夢のある話で今後に期待が持てますね。ところで、大島さんのスタジオに話を移しますが、ズバリこのスタジオの特徴は?
大島:ズバリ、手作りです(笑)。壁まわりの吸音材は全てハンドメイドです。音楽を良くしたい、という想いから始まり、PC を自作・ビジネス化し、その後に壁に行ったんです(笑)。音がどうしても気に入らなくて。自分好みの音にするため、長時間作業できるような環境を自ら作りました。音楽作りながら壁も作ってきたといったところでしょうか(笑)。
松村:近年、プライベートスタジオ完結で作業をされるクリエーターの方が増えてきました。プライベートスタジオでも、クオリティを維持したレコーディングを行えるための秘訣を教えていただけますか?

大島:電源はもちろんのこと、モニター環境をとにかく良くすることです。Cubase の場合は I/O や A/D、D/A、クロックジェネレーター等の組み合わせが自由ですので、随分なバリエーションの音が出せます。組み合わせが選択できないシステムですと、どうしても同じ音になってしまいますね。 Cubase の場合は周辺機器にとどまらず、3rd Party も含め組み合わせが自由ですので、自分好みの音を作り出すことができ、オリジナリティの追求ができるんです。
松村:ありがとうございます。秘訣ついでにヘビーユーザー大島さんならではの Cubase のマル秘「使い方」みたいなものも教えていただけないでしょうか?
大島:まずは音素材のライブラリを別ドライブに分散する、私の場合はメーカー別にしています。あと、作曲、ミキシング、レコーディングの作業工程を分けないといったところでしょうか。コントロールルームも活用しています。アウトボードも外部プラグイン化して活用しています。もの凄く楽です。

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独自の世界観が突き抜けるボーカリスト KANAN が表現するアニメミュージックの世界と、大島崇敬 (su-kei) トータルサウンドプロデュースによる最先端サーフミュージックがここに。アレンジ、レコーディング、ミックス、マスタリングまで全て Cubase 5 で制作された独特なサウンドは必聴。