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アーティストでありシンガーであり、作詞・作曲はもちろんのこと、アレンジ、レコーディング、ミキシング、マスタリングといったエンジニアリング部分、さらにはアートワークやビデオ制作まで何でもこなしてしまうマルチタレント、NORO さん。数多くのクリエイターが集まって無料配布しているということで話題になっている「電子雑誌トルタル」では、創刊号からオリジナルのミュージック・ビデオ付きで連載をしています。

その NORO さん、先日3rdミニアルバムとなる「the Room 1058」と1stシングルとなる「DREAM in RUINS」をハイレゾ配信という形で OTOTOY からリリースしました。全曲、Cubase でレコーディングするとともに、自らトラックダウンからマスタリングまで行っているとのこと。制作手法についてなど、いろいろ話を伺ってみました。

- もともと音楽をするようになったのはいつごろだったんですか?

3歳のころから音楽教室に通ったり、ピアノを習ったりしていました。中学校に入ってからはギターマンドリン部に入ってマンドリンを始めたんですが、実は当時スケボーもやっていて(笑)、スケボーの方を真剣にやるようになって、部活はやめちゃったんです。本当はギターもやりたかったので、部活をやめてから、部活のギターパートの友達からギターを借りて弾くようになり、高校に入ってからは、教室で放課後ライブとか、替え歌とかやってました。そこで音楽に対する自我が芽生えてきたんですよね(笑)。その後、自分でもアコースティックギターを買って、夜中みんなが寝静まってから、自室でこっそり小さい音で弾いて、曲作りをするようになったんです。

- バンドというわけではなく、一人で弾き語り?

そう、ボブ・ディランとか好きだったので、ハーモニカを買ってギターと一緒に吹いてみたりしながら、曲作りをしていたのですが、予備校で音楽マニアの友達ができて、YMO を教えてもらったり、ディープなナゴム系* の音楽を教えてもらったり、はたまたヘビメタのミックステープをもらったり……と音楽の幅も広がっていきました。

* ナゴム系…1983年より断続的に活動している日本のインディーズレーベル「ナゴムレコード」に所属するアーティスト

- じゃあ、大学では軽音に?

いえ、音楽は続けていたけど、インターネットサークルに入ったんですよ(笑)。ちょうどインターネット創世記といわれる時代でしたが、そのインターネットサークルがなかったら今の自分は存在していないかも知れません(笑)。いま Web 関連の仕事もやっていますが、そこでホームページの作り方も覚えましたし。福岡の大学だったんですが、インターネット仲間を介して、はじめてのライブを福岡でやらせてもらったり、音楽の友達も全国にできたりして、とにかくネット経由でどんどん広がっていきました。

- どこかの BBS に参加していたんですか?

クラブ好きのチャットや BBS があって参加してました。当時、まだインターネットをやっている人口が少なかったこともあり、仲間が作りやすかったんですよね。そのうち、東京のクラブミュージックのプロデューサーに私の話が伝わって、「NORO ちゃん、打ち込みやりなよ」なんてアドバイスも受けるようになったんです。最初はヤマハの QY10 を使っていて、これに打ち込んだデータを持って東京に行って、レコーディングスタジオで録ったりもしました。ネットで繋がったみんなに育てられて、インターネット版たまごっちみたいな感覚でしたね(笑)。

- DTM を始めるようになったのはいつごろ?

やはり大学のころで、そのプロデューサーが「秋葉原でミュージ郎がすごく安く売ってたよ」なんていって、早朝から並んで買って送ってくれたんです。PC に慣れていたからかもしれないけれど、Cakewalk を使っての DTM は難しい気はしませんでした。むしろ、ちょうどギターだけで表現する事に限界を感じていたし、QY10 でもあまり突っ込んだことはできなかったので、これにハマって、がむしゃらに曲を作ったんですよ。東京に行くたびに「こんなのできました!」って仲間に聴いてもらったり……、将来は音楽やるしかないな、東京に仲間もできたし、東京に行くしかないな、と思うようになったんです。それで東京で就職を決めて、東京で音楽をやる日々がスタートしました。

- Cakewalk はかなり長い期間使っていたんですか?

Cakewalk も基本は MIDI シーケンサーで、あまり細かなエディットができなかったので、Cakewalk にもしばらくしてジレンマを感じるようになりました。そのころ TASCAM の4トラックのカセット MTR なんかも使ってはいたのですが、何かのバンドルで Cubase のエントリー版であった Cubasis を使ってみたら、「あ、これいいじゃん!」って。これで次のステップに進んだような気がして、その後、Cubase VST 5 を購入。それ以降、バージョンアップを繰り返しながらも、ずっと Cubase ユーザーなんですよ。


- Cakewalk から乗り換えたということは、Windows での Cubase ということ?

はい、Windows 95 の頃からずっと Windows で、Lenovo の PC を何度かリプレースしながら使ってます。そう、大学のインターネットサークルの先輩の初代部長が IBM マニアで、あ、私は2代目部長だったんですが(笑)、おかげで私もずっと Lenovo です(笑) Cubase の何が面白かったかって、ソフトシンセですよ。VST 5 の時代からフリーのソフトシンセがいっぱいあったので、使いまくっていました。海外の変な音しか出ない音源とか、なんじゃこりゃ!? って音の音源とかあって、楽しかったですね。毎週新しい音源が紹介されるサイトなんかもあったので、これを使って音をだして、曲を作るのが楽しかったですね。

- アコースティックからソフトシンセの世界に行っちゃったということなんですか?ハードウェアのシンセとかは?

自分を振り返ってみて特徴的だなと思うのは、ソフトシンセで育ってきたということですね。最近は女子でもハードシンセを使う子が増えてきたけど、私は完全にソフト! みんながハードからソフトに移行する時代に、私もそれに巻き込まれていった感じだったので、ハードシンセは自分の使っている音源の本物はこれなんだ、って確認する程度ですね。実際、Prophet 5 の音とか大好きだし、友人のスタジオに Prophet 5 があったので、レコーディングで使わせてもらったことはあったけど、ハードで触るより、NI の Pro-53 使うほうが好きなんですよね…。保存やロードもしやすいし(笑)。ちょうど、私がフリーの変なシンセをあつめているときに、エレクトロニカがカッコイイぞ、なんて言われるようになったりして、自分でもエフェクターで音をプチプチさせたり、フィルターでウニウニ、シュワシュワさせたり……、そんな音で遊びながら曲に組み込んでいきました。それが2000年代の中盤ですね。

- 音楽は仕事として成立するようになったんですか?

就職していても音楽に傾倒していたんで、そのうち会社も辞めてライブハウスでブッキングマネジャーとして仕事をするようになり、そこで自分でもライブ活動を行ったりレーベルの仕事に携わったりしていました。その関係で多くの人とつながるようにもなり、ファーストアルバムのレコーディングも決まりました。ファーストアルバムには当時ポリスターにいらっしゃった牧村憲一さんに応援していただき、ポリスターのビルに併設されていた1970スタジオという Neve のコンソールがあるスタジオで生録。それをうちに持ち帰って Cubase でラフミックス、最終的にはスタジオに持って行ってトラックダウンと贅沢な作り方をしました。そして2007年にバウンディー(現スペースシャワーミュージック)より iTunes などから配信デビュー、2008年には全国 CD デビューできました。

- 人との繋がりがあってこそ、活動できる面というのはあるんですね。

そうですね、ちなみに MySpace が流行っていた時期だったので、プロモーションでこれを利用したことで、海外のミュージシャンとつながったり、自分の作ったパートを海外のエンジニアがミックスなんてこともありました。それもすごくいい経験になりました。技術的な勉強にもなったし。

- ファーストアルバム以降の活動は?

海外の人たちとのコラボや楽曲提供などを続けながら、曲を作りためていき、2ndアルバムではマスタリングまで自分でするようになりました。Cubase に慣れていたということもあり、同じ Steinberg の WaveLab を使うようになりました。今も使っているのはちょっと前のバージョンの WaveLab 6 ですけど。一つの DAW で音をほとんど完成させる人も多いですが、私はあまりトータルコンプをかけずに WaveLab で一気に音を持ち上げることが多いです。

- 電子雑誌トルタルや最新アルバムなどについても教えてください。

トルタルは、ある日編集長が、「電子雑誌を作るんだけど、音楽も動画もいっしょに入れられるから音楽関係の連載をやりませんか?」と声をかけてくださったんです。気軽に引き受けてみたんですが、せっかくなら毎回曲作っちゃおうかな、って、毎回手作り PV もセットにして連載をすることになりました。そんなに連載で言いたいことがあったわけでもないので(笑)、この音楽、PV をどう作ったのかを解説するテクニカルよりな内容で、のちに出すミニアルバムと同名の「the Room 1058」という連載をはじめたんです。最初に作った曲は iPad でトラックを作って Cubase に流し込んで、録音から先、ミックスまで Cubase で行い、最後のマスタリングは WaveLab。次の曲もその工程で作ったかな。その後の3曲は Cubase メインで作りました。この連載から大きくかわったのは、それまでソフトシンセっ子だったけど、生音、アコースティック楽器をいっぱい使うようになったことですね。たとえば vol.2 ではダンモイという口琴を弾いて録音してみたり……、これはこれですごく楽しいんですよ。リズムとかも、今までなら全部打ちこんでいたけど、あえてトライアングルや小さいシェーカーを買ってきて、マイクで録って Cubase でエディットして作るというのが、そこからのメインスタイルになってきています。その場で録っちゃうから、楽というのもあるけれど、私の場合は打ち込みも生っぽさを出したいという思いももともとあったので、生っぽさを出すなら生が早いだろう、と。

- ループ素材を使うケースってあるんですか?

もともと出来上がりのループ素材は極力使わないようにしていてちまちまと打ち込んでいたわけですが、そこに時間をかけるより、自分で叩いちゃったほうが早くて、自分の思うものが作りやすいことに気づいたんです。それ以来、演奏しながら作るようになっています。

- その生で録るのが the Room 1058 でのスタイルというわけなんですね。

はい。その連載も5回続いて5曲になったので、インストバージョンと合わせて計7曲。これらをまとめてミニアルバムとしてリリースしたんです。また、先行で同時発売した最新シングル「DREAM in RUINS」はまさに完全アコースティックで、自分としては初めての挑戦だったんだけど、全トラック各パートともミュージシャンにお願いして弾いてもらったんです。自分の演奏はイントロ部分のギターをちょっと弾いたのとボーカルだけで、あとはプロデュースと、エディットやミックスなどエンジニアに徹しました。全パート生でそれも他の人に弾いてもらうというのは、一人でやる打ち込みとは正反対の世界だけど、今までの自分を振り返ってみると、自然にたどり着いた感じなんですよね。

- 今後はアコースティックの世界に移行していくんですか?

移行したという意識ではなく、できることが増えたという印象です。また自分なりのチャレンジもしつつ、完成させていきたいと思っています。次作がどういうことになっていくか、注目していただけると嬉しいです(笑)

- ありがとうございました。

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