次世代ハイレゾリューション: 32ビット整数オーディオと 64ビット浮動小数点エンジン

2019/04/26 公開

32ビット整数 (32-bit integer) フォーマット

これまでオーディオの世界において "32ビット / 32-bit" というワードは、主に32ビット浮動小数点 (32-bit float) フォーマットのために使われてきました。

32ビット浮動小数点フォーマットのデータは、24ビットフォーマットのオーディオデータに浮動小数点演算用の8ビットデータ(指数 bit)が付加されたものです。

そのため、32ビット浮動小数点フォーマットはレコーディング後のミキシングなどの演算処理においては非常に有効なフォーマットですが、実質の解像度は24ビットフォーマットと同じです。

Steinberg 製品が対応する32ビット整数フォーマットは、真にさらなる高解像度を実現します。

ビットレート解像度

オーディオデータのビット内訳


出力波形の解像度のイメージ図

DAW 上で32ビット浮動小数点フォーマットでレコーディングした場合、その解像度は24ビットフォーマットと同等ですが、32ビット整数フォーマットでレコーディングしたファイルは24ビット(または32ビット浮動小数点)フォーマットの256倍のオーディオ解像度を持ちます。従来の24ビットフォーマットで表現できる音量の最小単位は、さらに256段階の細かさで表現されます。これは複雑なアナログ波形をより詳細に表現できることを意味します。

32ビット整数の圧倒的な表現力

32ビット整数 フォーマットはデジタル領域で 192dB のダイナミックレンジを持ち、入力信号に含まれる微細な信号をキャプチャーするとともに、従来の24ビットフォーマットを圧倒する表現力を持ちます。例えば、レコーディングに使用したホールの複雑かつ微細な残響音や、使用したアナログ機器が持つわずかな残留ノイズまでもがリアルに表現されます。

先進の64ビット浮動小数点 (64-bit float) エンジン

従来の Steinberg ホストアプリケーション (Cubase / Nuendo / WaveLab シリーズ) には 32ビット浮動小数点 (32-bit float) フォーマットのオーディオエンジンが採用されてきました。しかし、32ビット整数オーディオを実データ24ビット相当の分解能しか持たない32ビット浮動小数点オーディオエンジンで処理すると、32ビット整数オーディオの実データの下位8ビットを切り捨てることになってしまいます。Cubase / Nuendo / WaveLab シリーズには32ビット整数オーディオを完全な形で処理するために、64ビット浮動小数点 (64-bit float) フォーマットのオーディオエンジンが採用されています。


64-bit float, 32-bit integer, 32-bit float のビット内訳

~ 浮動小数点演算 (float) エンジン ~

近年の DAW は64ビット浮動小数点、または32ビット浮動小数点オーディオエンジンを搭載しています。浮動小数点 (float) フォーマットは、実際のオーディオデータにあたる仮数ビットを保持したまま、レベルを上げ下げすることができます。例えば、整数演算のオーディオエンジンではフェーダーを約 6dB 下げるごとに1ビット分のデータが切り捨てられていき、一度切り捨てられたデータは元に戻りません。

一方で浮動小数点フォーマットの演算では、たとえフェーダーを 48dB 下げたとしても、その後段で 48dB レベルを上げれば、元のオーディオが完全に再現されます。同じように、過度なプラグイン処理によりデジタルクリップしたとしても、その後段でクリップしないようにフェーダーを下げればクリップしない状態のオーディオが再現されます。これは、大きなレベルの上げ下げを伴うミキシングなどの作業において、音質上、非常に有効に作用します。