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レコーディング・エンジニア 赤川新一氏が語るRNDプラグインの魅力

聞き手:ヤマハ 国本利文、国内商品担当

○ そもそも赤川さんとVCMテクノロジーとの出会いの経緯を教えていただけますか?

2001年の暮れに遡りますね。確か僕の他にもエンジニアが何人か居ましたね。COMP276 の原型みたいなものを初代 Nuendo で試していました。1176であれば、レシオとアタックとリリースによって変化する音色イメージを、EQ と COMP でモデリングするような開発、チューニングで携わっていました。

○ その当時から10年が経過し、今や DAW 上のプラグインで手軽に使えるようになりました。こういった状況をエンジニアとしては、どう思われますか?

あの頃は Steinberg がヤマハグループになるとは夢にも思っていませんでしたね(笑)。正直、こういう便利になった状況については何とも思わないですね。どんどんやって欲しいと思います。思うにミキシングは、できる人はできる、多分才能だと思うんですね。修行によってスキルが上がって出来るようになるというケースもありますが、素人でも最初からプロを凌駕するようなバランス感覚を持っていることもある。そういう人はハナっからミキシングできてしまう。今のようなシステムをリーズナブルに手に入れられる、それはとても良いことですよね。最近はマニュアル世代というか、教えられるのを待っている人が多い。どうやったら良い音になりますか、なんて聞かれても一言ではとても答えられない(笑)。環境や知識、能力というよりも、人間性の問題と思うときもある(笑)。

○ 今回、RND プラグインを、Windows 7 64bit マシンで、DAW に Nuendo 5 を用い、192kHz のプロジェクトで約1ヶ月間じっくり使っていただいた訳ですが、まずは、Nuendo の操作性、音質など印象をお聞かせいただけますか?

操作性については、普段 Pro Tools に慣れてしまっている分、不利ですが(笑)、音質については、根本的に違うと思いました。リバーブのテールエンド、抜けという点もそうですし、何より中低域の実在感が別物。200Hz あたりのアタックの音が重なってくる場合、Pro Tools の場合は音が飽和してしまうのに対し、Nuendo の場合は最後まで残っている。今回の曲で言えば、エレピ音色のアタックですね。Pad 音色の音量を上げても最後まで残っている。もうひとつは、女性コーラスがふたりユニゾンで声を張った時、Pro Tools は一発で中高域が飽和する。赤も付いていないのに下手すると歪み始める。Nuendo はそこは全然楽勝でスルーしてくれた。帯域による飽和感の違いを感じました。初代 Nuendo から久々に最新の Nuendo 5 に触れてみたのですが、皆が選ぶ理由が分かりました。

○ 今回のプロジェクト(楽曲)のコンセプトを教えていただけますか?

「フェアリーズ」という少年少女合唱団から選抜された15人で「Fairies」というグループを結成し、千葉の STRIP GARDEN STUDIO で録音したのもです。この曲のソリストは2人、コーラスには6人が参加しています。ボーカルは 47fet を使いましたが、コーラスは B&K 4003 で録った物を重ねています。全体的に透明感とか神秘性を重視したサウンドを目指しているので、Nuendo の能力は、とても良い感じに嵌ったと思います。マスタリングのスケジュールの関係で、このミックスが CD に入らないのが残念ですね(笑)。

○ では早速、RND プラグインのお話に移りたいと思いますが、総合的な印象はいかがでしょうか?

EQ のかかり具合に慣れるのに少々時間を要しましたが、プラグインを挿すだけで質感を変えられる部分がホント良いですね。アナログの機材であれば通すだけで音が変わるんだけど、プラグインにもそういう感覚が入ってきたのは面白いですね。混濁していた中低域が整理されて実体感が出てくるような印象を受けます。各チャンネルはもちろんトータルにも EQ は多用しました。僕自身がレベルを叩く事に前向きではないためか、COMP は2つ使用にとどまりました。全てのヤマハデジタル機器に入れてしまえば良いと思いました。マスターだろうとモニターだろうと、どこにでも入れられるようになれば特徴ある音づくりができると思いますよ。

○ 普段、使われている他のプラグインの EQ あるいはコンプと比べてどうでしたか?

他のプラグインでフラットの状態で挿すだけで質感が変わるものは記憶にないですね。そういう意味でも、 Portico の質感の変化はいいですね。

○ 今回、RND プラグインだけでなく、リリース前の VCM プラグインもいくつか試していただきましたが、何か印象に残ったものはありましたか?

Open Deck はあらためてマニアックなプラグインだと思いました(笑)。A820 の質感は良く出ていると思います。ただ、上手いタイミングにあたらないと、Ampex と Studer の違いが分からないとか。昔あった Magnet ほど簡単ではないですね。やや過剰感がもっとあっても良いと思いました。EQ はやや SSL 的なニュアンスを感じましたが、デジタル EQ 特有のすべる感じが無く、とても使いやすいと思います。

○ このプラグインがもう少しこうだったら、みたいなご要望はありますか?

普段デジタルものに慣れてしまっていることもあり、Portico EQ は上下シェルビングのみか!とは思いました。当然、Neve 先生に言わせれば、そういうものだということになるのだろうけど(笑)。せめて、ローパス・ハイパスフィルターが入っていれば、とは思いました。

○ VCM テクノロジーで次に再現すべき名機は、赤川さんは何を期待されますか?

是非、RCA BA-6A を再現して欲しいですね。言ってみれば豪華な二次歪みですね。かけていくとヌルっとした艶が出てくるんですね。もう絶版なので手に入らないと思いますが、内田有紀の「愛のバカ」というアルバムではトータルに通してます(笑)。

○ 今日はお忙しい中、ありがとうございました。